ASI533MC(非冷却モデル)
ZWO社のCMOSカメラASI533〜は1"のスクエアセンサIMX533(11.31x11.31mm, 3008x3008pix)を使ったCMOSカメラで, アンプグローを抑制する回路が入っているらしく, しかも14bit出力という魅力的スペック.しばらく冷却付きの〜Proしかないようだったが, 最近になって非冷却のお手軽モデルが発売された.
これはもしかしたら絶妙のセンササイズで, 以前から人気のある"294"(フォーサーズ, 3:2)よりは小さくて安価, 安価だが画角が横長すぎの従来の1"センサ(例: "482"や"585", 16:9)と比べると, 視野の真ん中を効率よく使うのに有利な真四角という点でスグレモノかもしれない. 電視観望で惑星用のASI385MC(200万画素, 16:9)を使った描写を確実に越えることは期待できる.
また, APS-Cサイズの某社ミラーレス機の画素数が増えて2000万画素を越え, ディスクを食い尽くさんばかりの勢いに若干怯み気味なので, ディスクに優しいデータ容量(900万画素)に少しホットするという側面も(笑).
この非冷却モデルは今のところ, 国内ではElectric Sheep Co. Ltd.様だけの取扱のようで, 先日在庫が1となった. 昨今の国際情勢やら円安の進行やら, etc. etc. 諸事情を勘案した結果....... その1個がいまここにあったりする(笑)
Nikkorレンズをつける(安いアダプタで)
以前, クローズアップレンズで作った双眼鏡の片方に, NikkorレンズとCMOSカメラ(そのときはASI385MC)を付けて電視観望できるようにしたのだが↓, これにASI533MCもつけたい.
これ↑に使ったのが, 某密林系通販で3000円弱で入手できるカメラレンズ〜1.25"アイピースアダプタなのだが, ASI385MCの場合はT2ネジで取付けて合焦できるのに, ASI533MCだとこのままではできなかった.
つまり, このアダプタの場合Nikon Fマウントのフランジ面からT2ネジの先端までが40mmで, これだとASI533MCを一番近づけて接続しても, カメラレンズを最も縮めた無限遠の位置で焦点面がまだセンサに届かない.
寸法を確認すると, こんな感じになっている.
(ASI385MC, ASI533MCの図はElectric Sheep Co. Ltd.様Webサイトより: https://www.electricsheep.co.jp/astroshop/)
アダプタのFマウントフランジ面からT2(M42x0.75)ネジ先端まで: 40mm
ASI385MCのT2ネジの底からセンサの距離: 12.5-7.5mm=5.0mm
ASI533MCのT2ネジの底からセンサの距離: 6.5+4mm=10.5mm
で, 385の場合は40+5=45mm<46.5でNikonレンズのフォーカス範囲にセンサ面を持ってこれるが, 533では40+10.5=50.5mm>46.5なので, Nikonレンズのフォーカスを無限遠(レンズを一番後ろに下げる)にしてもセンサより4mm手前でフォーカスしてしまう.
ということで, アダプタのT2ネジ部分を4mm以上切ってセンサ位置を前に出せばOKということになる.
そういうことでDIY↓
ASIカメラは赤外域(700nm以上)でRGBの全てのセンサが同じような感度をもつところがあって, IRカットフィルタを入れないと色あせて全体が赤っぽい感じに写る傾向がある. 屈折系であれば色収差で赤外の焦点がずれてハロが出るかも.
ということで, 普通ASIカメラのノーズピース(1.25"スリーブ)につけるIR/UVカットなどのフィルタを, このアダプタでもつけられるように, 1.25"のスリーブをカットしたものを挿入してイモネジで止めてある. ここにComet BPフィルタなどを入れれば星雲の輝線を強調し光害を抑制する効果も使える.
こんな感じで接続してフォーカスを出すことができた.
(こんなことしなくても素直にZWOのNikonマウントアダプタを買えば済むといえばそうなのだけれども, 既に脚を付ける加工とかもしていたもので...(笑))
お試し電視観望
先日の晴れた夜に, 庭先でお試し電視観望. ASILiveを使用. 街灯などの光害でカブりがあるが, 2〜3分で北アメリカ星雲の形やらアンドロメダ銀河の淡い渦構造やらスバルの星雲やらが見えるようになるのでなかなか良い.
DIY双眼鏡の片方をコレにするということなので, もう片方がファインダとして使える.
以前使っていた電視観望用のカメラレンズ〜ASIカメラアダプタは, ASIカメラのノーズピースを使って接続していたのでカメラレンズのフランジバック内にASIカメラのセンサが来るようにするには, IR/UVカットフィルタを挿入できず, そのために像が甘くなり色があせる傾向があった(RGBの全てが感度をもつ赤外域が入ってしまうから). フィルタが使えるようになって改善され, 活用範囲が広がりそう.
Comet BPやQuad BPなどのフィルタを使えば北アメリカ星雲などの赤はもう少し鮮やかになるかも.
また, ASI385での電視観望と比較して画素数が4倍以上の真四角画像なので, 拡大して細部を見ることもできる(フォーカスがちゃんとあっていれば).
ASIStudioのLinux版(Ubuntu用のdebパッケージ)のクセ(?)
このとき↑使ったのはASILive 1.5.6だったが, ライブスタックが毎コマできなくて, 1コマ飛ばしくらい(?)になるとか, 挙動がおかしかった. まさかノイズリダクション用のダークフレームを1コマ毎に撮るわけはないし, そういえばASI385でASICapで惑星を撮るときにも最近コマ落ちがよく起こっていたなぁ...と思いつつしばらくそのままにしていた.
さらに, そういえばライブスタックのときBiasとDarkを使おうとすると"Cannot find matched triangle"とかいうメッセージが出てスタックができない, という問題もあって, 結局Lightフレームだけでスタックしたので, 上の↑写真はノイズが多めである.
ASILiveやASICapなどZWO社のCMOSカメラ用ソフトはASIStudioというパッケージになっていて, 現在のバージョンは1.6.3 (2022年8月).
実は, 1.6が出た時に一度ダウンロードしてインストールしたことがあったが, 実行すると動かなくて, 結局, 前のバージョンの1.5.6に戻して使っていた.
しばらく経ったので問題も解決されているかも...ということで, 1.6.3をインストールしてみたら, ちょっと「癖」があることが分かった.
通常, サードパーティのソフトを入れるときには/optなどにディレクトリを作ってインストールすることが多い. それで,
$ sudo su
# mkdir /opt/ASI
# ./ASIStudio_V1.6.3.run
そしてインストーラの中でインストール先を"/opt/ASI"としてやれば, そこに入れてくれる.
そして, いざ通常ユーザーに戻って実行しようとすると...
$ /opt/ASI/ASILive
ランタイムライブラリがないとか言って動いてくれない.
ところが, スーパーユーザーのまま実行すると動くのである(!?).
つまり, インストーラの仕様が, インストールしたユーザーでだけ実行できるようなことになっているのかもしれない.
それで, /opt/ASIをつくった後で, それを自分の所有に変更し, 通常のユーザーでインストルしてみたら, 無事に動作した.
# chown -R <ユーザー名>.<ユーザー名> /opt/ASI
# exit (スーパーユーザーから抜ける)
$ ./ASIStudio_V1.6.3.run
(インストールの途中で一度sudoのパスワードを聞かれる)
これで, 自分の通常ユーザーとしてソフトを使えるようになる.
ちなみに, インストーラを実行したときのデフォルトのインストール先はホームディレクトリの中の"ASIStudio"になっていた. システムレベルで利用できるようにインストールするという概念を持たなければ, 問題なく自分だけ使えるインストールができるという仕様??
ともあれ, こうして1.6.3にアップデートしたら, ダミーの星像(PCに表示したやつ)で試したみたところでは, キャプチャやライブスタックのコマ落ちは無さそうだし, Bias/Darkによる前処理入りでのスタックもできそう.
【了】