これらのレンズたち↓, 星にはどうだろうと思ってテストしてみた. (末尾の追記2でXF35mmF1.4が乱入!)
- Fujifilm XC 35mm F2.0 : Fujifilm XCシリーズ唯一の単焦点, APS-Cの標準レンズ
- 七工匠(7 Artisans) 50mm F1.8 (MF) : 1万円以下で入手できる激安中華製レンズ
比較対象としては, 今まで数年使っているこのレンズ↓
Nikkorはフルサイズ用のオールドレンズだが, APS-Cのミラーレスに使うのでも開放では周辺の星像は歪んで見れたものじゃなくなるので, いつもはF2.8で使っている.
イマドキのレンズたち, Fujifilmの廉価版(といっても光学系はXFと同じらしい)と激安中華レンズがどんな像を見せてくれるか...
撮影条件: ボディはFujifilm X-T20, ISO3200, 30s. 10枚くらい撮って, ダーク, バイアス処理をしてスタックし, ホワイトバランスとコントラスト調整をしている. フラットは使っていないが, コントラストをいじっているので周辺減光は実際より少し強調されている.
撮影したときは右下の方に街灯りがあって少しカブっている.
まず, どんな絵になるか...
Nikkor 50mm F1.8 → F2.8
このとき薄雲が多少あったらしく星がにじむ. 拡大するとそんなにシャープではなくむしろ星像は大きめだが, F2.8で四隅でも星像の肥大はあっても目立つ伸びはなく, それなりにいい感じかも.
Nikkor 50mm F1.8 → F4
F4に絞ると全体的に星像が締まる.
7 Artisans 50mm F1.8 → F2.8
中心部はNikkorと比べて遜色ないかもしれないが, 左右の周辺で特に左の星の伸びが目立つ. (四隅の星像は, 下の中央・四隅拡大の画像を参照のこと)
7 Artisans 50mm F1.8 → F4
F4に絞ると全体に星像が締まるが, 左端は締まっても線状に伸びている. F4でこれだと星に使う気にはならないTT (Nikkorがあるから)
Fujifilm XC 35mm F2.0 → F2.8
ほとんど大丈夫だが, 四隅のところで星が三角になっていて残念TT 「逆コマ」っていうのかな? 非点収差?
Fujifilm XC 35mm F2.0 → F4
F4に絞ると四隅の星像も小さくはなるが, 拡大すると矢印型.
むしろF2.8で左右を捨てて正方形のフレームとして使えば幸せになれるかも?
中央と四隅の星像は...
中央と四隅を1200x800ピクセルずつ切り出してタイルにしてみる. 四隅の星像の変形がよく見える.
Nikkor 50mm F1.8 → F2.8
Nikkorオールドレンズ50mm, 星像肥大しても四隅もなんとか丸を保っているのが素晴らしい!
Nikkor 50mm F1.8 → F4
7 Artisans 50mm F1.8 → F2.8
この通り, 一般写真だと逆行に弱い点をのぞきまずまずの評判のこのレンズだが, 星像はシビアで周辺の像の伸びと倍率色収差?がかなり目立つ. 左右の歪み方にかなり差があるので光軸が傾いているのかな?
7 Artisans 50mm F1.8 → F4
F4でも放射状の星像の伸びは収まらず.
Fujifilm XC 35mm F2.0 → F2.8
XC35mmはかなり期待していたのだが, F2→F2.8と絞っても四隅でこの星像だったTT.
Fujifilm XC 35mm F2.0 → F4
F4に絞ると, 拡大しなければ四隅の歪みもそれほど目立たないかもしれないが, 明るい星があると気になる. ここは諦めるべし.
結論
- Nikkor 50mm F1.8: やっぱり良かった. F2.8でも味がありきっちり撮るにはF4.
- Fujifilm XC 35mm F2.0: 期待したが四隅が難点. F2.8で正方形で使うか...
- 七工匠 50mm F1.8: F4でも隅で星が伸びる. これは星には使わない.
【了】
追記
Fujifilmには35mmレンズがいくつかある. XC 35mm F2と中身は同じと言われるXF 35mm F2 R WR (防水防塵), XF 35mm F1.4 R (レンズ群全体を前後させるフォーカス方式でAFは遅いらしい), 2年前に発売されたXF 33mm F1.4 R LM WR (リニアモーターで防水防塵).
35mmF1.4は2012年発売のロングセラーで, F2との詳しい比較の記事があった↓
コーナーの画像の比較を見ると, F2と比較してF1.4は圧倒的に高い解像度らしい. 星を撮るならF1.4を使えということかも. F2の方は絞っても四隅の像がそれほど改善していない. 上のテスト結果と同じだ. F1.4はレンズ群全体を動かすフォーカス方式でAFがうるさくて遅いとか逆光耐性がイマイチという欠点があるらしいが, 描写は「神レンズ」と呼ばれ今でも人気が衰えないほど.
F2も, 四隅の描写はともかく軽量でインナーフォーカスでAFが速くて防塵ということで,ハードな環境も含めて一般用途にはF1.4に優る面が多い.
33mmF1.4は2021年に発売されたもので, フルサイズ換算の焦点距離が50mmちょうどになっていて(35mmだと53mm), AF方式がリニアモーターとなり速度が格段にあがったとか, コントラストと逆光耐性が上がったというレビューがあった. メーカーさんのサイトで自ら「神話は第二章へ」とか.
誰も指摘していないが, 3つのレンズの中で35mmF1.4だけが絞りが7枚羽根, 他は9枚となっている. Nikonのオールドレンズは7枚で, そのために明るい星にトゲトゲが出てピカーッという感じになる. 9枚だとほぼ円形で星は丸く太る感じ. ピカーッとなるのは好みなので, 7枚羽根という点をとっても35mmF1.4は魅力的かもしれない.
他にサードパーティの35mmくらいのMFレンズなども見るが, 小型軽量で四隅まで解像するXF35mm F1.4に性能, 使い勝手, 価格で匹敵するものが見つからない.
こうしてレンズ沼に足をとられていくのか...(笑)
追記2
Fujifilm XF35mmF1.4(!)のテストをした.
昇ってきたオリオン座付近をX-T20, ISO1600で撮影. 絞りF1.4, 2.8, 4について各々露出時間は5s, 20s, 30s. 5〜10枚AstroPixelProcessorでスタックしてRawTherapeeでAutoLevelをかけただけ. バイアスは引いてあるがダーク, フラットは無し. 中央と四隅のタイル画像.
Fujifilm XF35mmF1.4 開放
Fujifilm XF35mmF1.4 → F2.8
Fujifilm XF35mmF1.4 → F4
開放のF1.4では見事に回転方向のツノが出ているが, F2.8では目立たなくなり, 実用域と言える. F4では四隅までシャープな感じ.
F2.8で20s x 14枚とってスタック, 下の方の光害のカブリの補正までをAstroPixelProcessorでやってRawTherapeeでトーン調整したらこんな感じ.
宵の口に市内から遠くない所で撮ったものだし, 雲が来て中断したので露出時間は5分に満たないのであまり写ってないが, 星像はOKな感じ.
このXF35mmF1.4はF2と比べて少し重みがあって, AFが遅くうるさいがなかなか味のあるヤツらしく, 一般撮影では軽く小さく速いF2が良いシーンの方が多そうなのに, 星じゃなくてもF1.4の方を持ち歩きたくなる. 開放のフワッと感と2.8以上のシャキッと感のギャップ?
【完】