風来坊@真幸福知

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焼き芋工学

はじめに

サツマイモを茹でても大して美味しくならない.

昔, 夜な夜な「石焼き芋」の軽トラが町を回る売り声が聞こえたものだが, 最近は聞かなくなった. その結果なのか原因なのか知らないが, スーパーやコンビニエンスストアでかなり美味しい「石焼き芋」が売られるようになった.

石焼き芋がなぜ美味しいのか?

文献調査とか

こんな文献があった. 

こういうことらしい.

サツマイモは貯蔵でも甘くなる: 13-15℃, 湿度90%での貯蔵が適する. デンプンが糖化しスクロース等の遊離糖ができて甘くなる. しかし適温より低い温度では糖化が早く進むが10C以下では低温障害で腐敗してしまう.

加熱の効果: 65℃以上でデンプンが糊化する. β-アミラーゼという酵素がはたらくとマルトースが生成し甘くなるが, 温度が75℃以上になるとβ-アミラーゼの活性は失われる.

ということで, 適温で貯蔵することで甘くなるというのは買ってきたサツマイモの取り扱いの参考にするとして, 調理については温度65-75℃, つまりデンプンが糊化してマルトースが生成する温度帯に長く保つようにすることで甘い焼き芋ができるということらしい.

電子レンジでは内部温度が急速に上昇しβ-アミラーゼの活性の効果が得られないので甘くならない. 

熱工学(熱屋の考察)

石焼き芋」が何をやっているのかというと, 石, つまりセラミック系の数mm〜数cmの粒子で芋を囲み, 熱源からの熱を間接的に, セラミック粒子の熱放射によって芋に与えるという方法なんだろう.

調理関係でセラミックといえば, 遠赤外線で材料の中までよく熱が通るとかいって宣伝されるが, 「セラミック」と「水」(食物の多くの割合を占める)は共に放射伝熱の効率が高いという特性を持っている.

高温に熱せられた物体の表面からは赤外線によって熱が放射されるが, 単位面積当たり放射される熱量は(表面温度の4乗)x(放射率)に比例する. 「放射率」は物質の性質である. 実は光沢のある金属材料は0.01〜0.1くらいなのに対し, セラミックやガラスは0.8〜0.9くらいでとても大きい. 水はほぼ1である.

だから, 金属の鍋を熱して食物を蒸し焼きにするのと比べたら, セラミック鍋を使う方が食物に熱が伝わりやすい.

なお, 沸騰させた水に食物を浸けて熱する, つまり「茹でる」のは事情が違って, 沸騰水は激しく対流していて熱の伝達がめちゃ速く, 短時間で全てを沸点(100℃)まで加熱する. 鍋が金属だろうがセラミックだろうが, これはあまり影響されない.

芋を茹でても甘くないのは, たぶんこのためだと思う.

水を使わない赤外線加熱は, 芋の表面をまず高温にして焼き, 内部の水分や甘み成分が逃げないように閉じ込める効果もあるのかもしれない. 茹でると甘みが溶け出してしまうだろうから. そうしておいて, 内部温度をゆっくりと上げてゆくのだろう.

実験

今, 安価に入手できるセラミック鍋として, こういうのを見つけた.

最近は電磁調理器が増えて, それ対応の鍋が多いので, オールセラミック製の鍋は少なくなった. ホームセンターにあるのは土鍋(土が柔らかめで高温に弱そう)やホーロー鍋(金属にセラミックコーティング, 高温にすると熱膨張率の差でコーティングにヒビが入る)くらいである. 直火で空炊きOKなものが見つからない.

上の品は多分アルミナとかの高耐熱セラミックなのだろう. 空炊き(水なし)調理もOKとのこと. キャンプなどで人気のダッチオーブンは鋳物の鉄鍋で空炊きもOKだが, カセットコンロで使うなという注意書きを見たことがある.

それで, 実験!

上記のセラミック鍋の中に, 芋が直接内面に触れないように100均で見つけた小さな網を入れてある. 

最初は「中火」で10分くらい鍋の温度を上げる. 側面の中心部で150〜200℃になったら弱火にして40分くらい加熱.

30分くらい経過したところで一旦火を止めて蓋を開け, 芋を裏返すと良いかも知れない.

サーモグラフによる鍋の温度分布の測定. 側面の中心部が150〜200℃になっている.

そして...

できあがり.

成功です:-P

 

【了】