風来坊@真幸福知

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始まりは坐禅会のご案内, 思いつくことを何でも書いていたら星空系に... Started with Zazen session info. now almost astrophotos. 시작이 참선회 안내, 이제 별하늘 사진들.

「スペースアイ」という小学生向け望遠鏡が実は超マニアックだったりする

こんなことを言ってる人がいた.

この方は下の記事↓(天リフさんのレビュー)で紹介されている1万円前後で買えて小学生がひとりで使うことができる(サイズ, 重さなどを考慮して)モデルの中から, 「ビクセン スペースアイ600/700」に特に注目している.

ビクセン スペースアイ」は, 日本のアマチュア向け天体望遠鏡メーカー最大手(といっても中小企業だが)のビクセンが(たぶん)小学生へのクリスマスプレゼント用*1に提供するモデルで, 現行モデルは有効径50mmのスペースアイ600と有効径70mmのスペースアイ700がある. (600, 700というのは焦点距離らしい)

1万円前後というのは600の方で, 700は2万円前後. ビックカメラ等の量販店でも扱われていてメルカリなどでの中古品の流通も多い. 子供用に購入して飽きたら売る感じなのだろう.

旧モデルのスペースアイ50M, 70Mも中古品はたくさんあり, 鏡筒のスペックは同じみたいだが, 架台が違っていて, 実はここに「マニアック度」の差がありそう.

冒頭のブログで「哲学的名機」と言えるポイントとして

などが挙げられている. つまり, 他社の初心者用廉価モデルが今は一般的でなくなった24.5mmサイズ(ツァイスサイズ)のアイピースでしかももっと安い形式だったり, よくできてはいるが汎用性はない架台だったりするのと対比している. さらに...

続く記事↑ではスペースアイ600/700の架台の素性について, 往年の名機「ミザールK型」にルーツがあるのではと....

これ↓は◯◯オクで入手したかなり古い本物のK型に一部中華製コピー品の部材を組み合わせて使っているお手軽観望用経緯台.

分解清掃して軸の締め付けやウォームギヤの隙間を調整すると, コンパクトで振動のおさまりも良い, いい感じの架台で手放せなくなる.

ちょうど某◯◯オクで1000円ほどでスペースアイ700のジャンク品(付属品欠品, 汚れあり)が出たので, 興味津々になり入手してみると...

経緯台は, 確かに見た感じミザールK型とそっくりで, 中華製コピー品のOEM供給ではないかと思われる. (かってに推測してるだけです)

少し違うのが高度軸のクランプが手前ではなく, 敢えて手元から遠い前方に配置されている. これは, 本物のK型が望遠鏡を上に向けた時にこのクランプが下を向いて周りの部材と干渉するのが, 初心者には使いにくいだろうという配慮で変更されたのではないか? 確かにこうなっていればクランプの操作を妨げることがない.

さらに, 方位軸の台座を北側へ傾ける仕掛けがあって, 簡易赤道儀として使うことができる.

こんな使い方を初心者は想像だにしないはずだが...(笑)

この辺り, 名目上は小学生をターゲットにしながら, 実は超マニアックな仕様. 往年の名機を入門者向けに設計変更!?と思ったら裏技*2まで仕込んでしまう.「キワモノ」の称号を授与したくなる(笑)

冒頭のブログで指摘されている通り架台への取り付けがビクセン規格の「アリガタ」で汎用性があるので, この架台はそのままお手軽観望架台や, 光軸調整などの作業用として流用できる.

付属していた微動ハンドルは, 取り付けが割と大径のローレットネジで締め付ける方式になっていて, これなんかは上位機種のポルタとか(確か差し込むだけで脱落しやすい)よりしっかりできているかも...

ということで, なかなか面白い品である.

ちゃんと使えるように調整しようとアチコチいじってみた.

方位軸がグラグラしていて, 下から覗くとナットが緩んでいた. 本物のK型はナットに回転止のイモネジがささっているが, こっちはナイロンナットで緩みにくくしているだけかも. それで, 適当に締め付けてネジロック剤を塗布. 三脚が華奢なので本物のK型みたいにはしっかりしないが, 普通に使える程度にはなった.

ウォーム軸の回転については, やたら固くて回らない. それで調整したいのだが, 調整機構が見当たらないのでしばらく困る...

それで, 軸受の辺りがなんか偏心しとるなぁ..と眺めていると, 突然ひらめきが!?

下からささっている(暗くて見にくいが)イモネジを緩めると, この偏心した軸受をカニ目レンチで回転できる. するとウォーム軸とホイールの間隔をこの偏心の範囲で調整できるではないか.

調べてみたら, この方式は「エキセントリックカラー」というモノらしい. 気になって他の経緯台も見てみたら, SVBONY SV225やポルタもこれらしい.

鏡筒の方は...

プラスチック部材が豊富だが, 鏡筒はアルミらしい. 内面は防反射紙がドローチューブまで貼られていた. 鏡筒バンドはプラでアリガタはアルミっぽい. ちゃんと押さえるところは押さえながら廉価を極めた感じがする.

対物レンズをはずして清掃しようと思ったら, セルは外せるがセルそのものは分解できないみたい. それで, レンズをアルコールで拭くだけにした. 普通によく見える.

大きめなフードと, 対物レンズセルの先端部分はテカテカのプラスチック生地だったので, 例によってターナージェットブラックで黒くした. 「天リフ」さんの記事で指摘されていた内面反射は, この辺だったのかもしれない.

接眼部↓はほぼプラ製. ファインダーは, はめ込むとツメで止まる方式みたい. 欠品だが.

メッキされたプラ製のドローチューブ.

アイピース取り付けが一般的な31.7mmなので, 付属品よりも良いアイピースや天頂ミラーを買ってきて使える.

やろうと思えばカメラアダプターを付けて, 軽量なミラーレスで月や惑星を撮るとかできるかも.

 

ということで.

ウワサどおりのマニアックさ.

子に与えて, もしも飽きてしまったら売れば, 次の子のお父さんか, もしかしたらマニアックなおじさんが買ってくれそう.

この価格帯で全周微動付きの経緯台で簡易赤道儀化できるものは唯一無二なので, 飽きないで星の沼にご招待されてしまうお子さまたちも発生するかも.

子へのプレゼントのつもりが, お父さんお母さんがハマってしまう可能性も.

 

この記事も潜在的マニアの皆様の参考になることを祈る.

 

☆祈☆

*1:ビクセン」という社名はサンタクロースのトナカイのうちの1頭の名前

*2:昔, 藤井旭氏の著書「天体写真の写し方」に経緯台を傾けてガイド撮影するアイディアが載っていたのを記憶しているが, それがメーカー品に実装されるとは...