風来坊@真幸福知

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3.11を前に, 福島の汚染水を海に流そうという話

韓国の知人により開かれるプサンでの3.11の集まり(慰霊祭)で福島事故の影響などの話を依頼され, いろいろ資料を探していたら, 汚染水の問題についてJames Concaという人のForbes (2017年11月29日)の記事を見つけた.

www.forbes.com"少しずつ海に流すべきだ"という主張.

私もそう思う. 技術的にはたぶん多くの人がそれで良いしそうするしかないと思っている. やがてそうするしかなくなる日が来るとも予想できるが, 風評被害や社会的非難という社会的問題のために身動きできないでいるように見える. 氷の壁で汚染水の増加を止めるという話は実際うまく行ってるんだろうか? 仮にうまく止まっても今ある汚染水はどうにかしなければならない.

記事の要点をまとめるとこんな感じ:
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福島のタンクに貯められている"汚染水"は, 今ではほとんどの放射性物質は除去され, 除去の難しいトリチウム(三重水素)だけが残っている.
トリチウムは要するに水素なので水と簡単に原子が行ったり来たりして普通の水と同じように振る舞う(だから除去が難しい). 放射線は低エネルギのβ線で水の薄い層や細胞壁などで遮断されるので細胞核への影響は弱い. 生物の体を水と一緒に循環するから長時間体内に留まって被ばくを増やすこともない(人間に対する生物学的半減期は10日, 魚だと2日).
各国で環境への放出限度として定められた基準はまちまち(アメリカ 740Bq/L, カナダ 7kBq/L, スイス 10kBq/L, オーストラリア 76.103kBq/L). これは健康影響に基づくのではなく(健康影響は小さいのでそれに基づいて基準を作るのはno idea), 技術的に規制可能な値になっている.
自然界では宇宙線によって大気の上層で年間150,000,000,000,000,000 Bq (150PBq)のトリチウムが発生している. 現在自然界でいちばん大きな割合を占めるのは過去の大気中の核実験に由来するもので, 大気中のトリチウム濃度は1963年にピークとなった.
海水にはさらに, カリウム40など16,280,000,000,000,000,000,000 Bq (約16x10の21乗Bq)の放射能が自然に存在する. (要するに自然界に既にある放射能に比べれば福島の汚染水は見た目ほど大したものではない.)
温暖化対策のCO2削減で日本は先端を行っていたのに, 原子力発電所を止めて火力で代替してからCO2放出は急上昇(skyrocketed). (全体的なバランスを見ないと本当に道を誤るぞという警告?)
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どのくらいの流量でならば近くの海の放射能濃度をそれほど増やさず漁業などに(技術的な)悪影響を与えずに放出できるのか, など, 責任回避の沈黙ではなく, 建設的な議論が起こらなければならないと思う. それともタンクのままで全部蒸発してしまうのを黙って待つのだろうか? 何らかの事故で流れちゃったあとで大丈夫ですという時を待つのだろうか?
国内の話をちょっと探したら, 今年になって規制委は流せと言ってるみたい.

www.sankei.com追記(3/2): 環境のトリチウム濃度について新潟での詳しい調査の論文があったので濃度の参考に. (規制値60kBq/Lと比べたらずっと低いが...)

http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Top2/849/123/H26nenpou2.pdf

日本の降水中のトリチウムは1963年でピーク約100Bq/Lとなり(核実験の影響), その後減少傾向, 最近のデータは0.1から1Bq/L. 海水は相対的に少なく, 同じように核実験の時代に高くて減少傾向にあり, 最近は0.1Bq/Lくらい. 陸水は降雨と同じくらい.