風来坊@真幸福知

出雲市 福知寺 行事ご案内 坐禅会 日記 テクノロジー English Zazen session technology Korean 한국어 참선 묵조선 텍놀로지

韓国の学生さんたちと福島第一廃炉現場などの見学(2018年12月)

(ちょっと長いです)

今年(2018年)の夏に, 春まで勤めていた韓国のポハン工大(POSTECH)から連絡があり, 原子力工学専攻の大学院生たちに福島第一の廃炉現場の見学をさせたいけどサポートしてくれない?とのこと. 関連する研究施設の見学もセットで2泊3日くらいのスケジュールを考えているらしかった.

弊社のサービスとして専門教育の技術的なサポートや国際交流サポート(翻訳とか)をしているので, 都合があえばできますと返答してすぐに(8月)東電などへの問合せをした. 現場への見学・視察はとても多く, 可能な日時は12/11との回答. 4ヶ月待ちである. (年間1万5千人, 多い日には1日に5-6団体が来るとのこと)

近くにJAEAによる福島の廃炉関連の研究施設ができていることを聞いていたので, そちらの見学も含めたスケジュールを提案し, 結局こんな感じに:

12/10 成田到着

12/11 東京電力福島第一原発廃炉現場見学

12/12 JAEA福島研究施設の見学(楢葉の遠隔技術開発センター, 富岡の廃炉国際共同研究センター) [私はここまで同行してサポート]

12/13 東京観光, 帰国

うちは旅行業ではないので旅行のアレンジはPOSTECH御用達の旅行社であるHana Tourを利用してもらい, こちらでは東京電力, JAEAとの調整, 現地での解説の日韓通訳を請け負うことに...

韓国の大学院生たち, 一応英語はかなりできるはずなので英語の説明を依頼しても良いのだが, 彼らがそれほど英語に強くないことも知ってるので(日本の学生よりは強いかも), 微妙なところも含め日韓で通訳したほうがよく伝わると思ってそういうことにした. そのくらい日本語と韓国語は近いのです.

ちなみに, 見学には事前に参加者リストなどの書類を出す手続きが必要. 少なくとも1ヶ月前には書類を送るなど結構気を使います.

12/10 成田〜いわき

成田空港で無事14名(教授1, スタッフ1, 学生13)の一行を迎え, 貸切バスで移動. 第2ターミナルでは, バスのりば23番あたりにいる誘導係の人に, バス会社とナンバーを言って呼び出してもらうと5分ほどでバスが来るという仕組みということ. 早速福島へ向かう.

2年前は学生9名と来たが, それ以後韓国の別の大学の学生たちが福島に研修に来た話も聞いたし, 原子力の研究分野では学会などで福島の状況についての話題も多いので, 変な抵抗感は比較的少なくなってはいるような気がする. それでも, 今回来た学生たちも福島の見学に行くといったら周囲からネガティブな言葉をかけられたりという経験をしたようだ. 風評は韓国の方がきつそう.

途中で例によって懐かしの茨城県友部SAで休憩. 常磐道では守谷の次に大きい(?)おすすめSA. 韓国の学生さんたちに必殺!「納豆DOG」などを勧めていじってみる(笑). 何人かが勇敢に納豆+チーズなどのホットドッグに挑み, 思ったより評判はよかったりする.

f:id:cheonghongsa:20181218154756j:plain

恒例のいわきのホテルパームスプリングに到着. 関東の冬は澄んだ夜空で彼らの学ぶポハンと気候が似ている. 窓から西の空には三日月.

f:id:cheonghongsa:20181218154802j:plain

12/11 福島第一廃炉現場見学

翌朝, 9:30に富岡の廃炉資料館(旧エネルギー館)での受付で福島第一の見学. 出発するときにホテル前でこのホテルのオーナー(韓国のCさん)とばったり会う. 面識はなかったが, オーナーが韓国の方というのは前から知っていてそれっぽく見えたので声をかけたら当たり(笑).

いわきは人気のある温泉観光地だが, 事故以来韓国からの観光客は皆無. それでも廃炉関連の仕事で人はたくさん来るようになり, 日本の観光客はかなり回復してるらしく, 商売は成り立ってるのかもしれない. とはいえ韓国の若い人たちがこうして来てくれるのは嬉しそう. Cさんは出発前のバスで学生たちに語って下さった.

立教大に留学経験があって数十年日本に住んでいて, 韓国でもキョンジュ大学で観光について教えた経験がある. 最近北海道にもホテル事業で進出中らしい.「日本は韓国で考えているよりも相当立派なところがある. 知性と理性でものを考えるところは学ぶべきだ.」「韓国では日本の実態を知らずに風評で怖がる人が多いようだが, 実際に見て感じたことを伝えてほしい」云々.

f:id:cheonghongsa:20181218154850j:plain

道中では持参した線量計を見せながら, まわりに見えるものを説明しながら行く. いわきでは0.05μSv/h (要するに普通, ソウルの半分以下), 高速道路で広野を過ぎるとやや上がってくる.

f:id:cheonghongsa:20181218175229p:plain

<岩通SV-2000, 4万円だけど割と精度よさそう, お買い得感あり.>

路肩に数カ所モニタリングポストがあり, 線量が表示されている. 富岡ICまででは1.3μSv/hくらいが最高.

f:id:cheonghongsa:20181218154821j:plain

富岡ICを降りて少し南に行くと双葉警察署の向かいに廃炉資料館がある. そこが集合場所. IC付近では帰還困難区域の標識が目立つ.

f:id:cheonghongsa:20181218154844j:plain

受付をして現場の状況と見学ルートなどの説明を受ける.

f:id:cheonghongsa:20181218154931j:plain

東電のバスに乗り換えて現場へ. 現場へは警備上の理由でカメラの持ち込みは認められていないので, ここからの写真は東京電力の方に撮影・提供いただいたもの.

f:id:cheonghongsa:20181218154721j:plain

帰還困難区域では店舗なども地震被害の状態のまま放置されていて, 悲壮感が漂う. 除染廃棄物が置かれている場所もいくつか通過.

f:id:cheonghongsa:20181218154730j:plain

敷地外では, 国道6号のT字路を右折して現場に向かう道の, 少し小高くなったあたりの線量が約7μSv/hで最大.

敷地内では除染の結果96%がグリーン・ゾーン, つまり通常の作業服で行動できる領域になっている. ポータブルのモニタリングポストがあちこちに置いてあり, 値はだいたい1μSv/h前後. 見学者は構内専用のバスで構内をまわる. 2年前は個人線量計を付けて靴カバーを装着していたのに対し, 今回は靴カバーも不要で線量計だけ受け取ってバスに乗り込んだ.

事故になった原子炉建屋の近辺では線量が高く, 作業している人たちはカバーオールの防護服を来て全面マスクを着用していた. バスの中でも東電の案内の方が電離箱式カウンターで計測しながら移動していたが, 2号機と3号機の間を通過するときに約280μSv/hで最高値を示した. (↓この写真の位置)

f:id:cheonghongsa:20181218154636j:plain

敷地内の要所要所でバスをとめて周囲に見えるものの説明を聴き, 質問したりしながら約1時間で構内を回り終えた. 今回参加した学生の多くは廃棄物処理を専門にしていて, 汚染水の処理や除染などに関心が強いらしく, その関係の質問をよくしていた. この見学による個人の累積線量の計測値は10μSv. 歯のレントゲン撮影くらい.

玄関に掲示されていた世界地図には訪問者の居住地にピンが立ててある. 世界のあちこちから人が来ている. 韓国は多くピンが既に密集状態. 近いだけに関心を持って専門家の交流も活発なようだ. ポハンに一本立てる.

f:id:cheonghongsa:20181218154621j:plain

東京電力による写真はここまで.

廃炉資料館に戻ってきて質疑応答の時間を持った後は解散. そのまま廃炉資料館の展示を見学. 当日朝の地元新聞でも, この施設に地元の訪問者が多く来ているという記事があった. 事故の状況や廃炉作業の現状が展示されている. 事故原因に対する洞察と反省のメッセージも.

f:id:cheonghongsa:20181219001723j:plain f:id:cheonghongsa:20181219001732j:plain

廃炉資料館の周囲は避難指示解除になった区域であり, 2年前くらいからインフラや店舗が戻ってきて今は「さくらモール」というショッピングモールができている. ダイユーエイト(ホームセンター), ツルハドラッグ, ヨークベニマル,フードコートが営業し, 昼時には近くで仕事している人たちが集まって賑わう. ここで昼食.

f:id:cheonghongsa:20181218154832j:plain

フードコードはラーメン, どんぶり, カレー, 定食, お弁当などかなり充実している. まだこの近くには多人数を賄えるような飲食店は少なく, 働く人たちの重要な台所になっているようだ. 日本のラーメンは韓国の学生たちに人気. 

f:id:cheonghongsa:20181218154837j:plain

近くの双葉警察署の横にある公園には, 津波が来た時に住民の避難誘導をしながら殉職された2人の警察官の慰霊碑がある. 津波で流され潰れたパトカー(お2人が乗っていたもの)が発見された後, そのパトカーの残骸に自然と人々が花を供えたりするようになり, それがここに移動されたとのこと. パトカーの横には震災・津波の犠牲者の慰霊碑が立てられている.

f:id:cheonghongsa:20181218175020p:plain

昼食で解散する前にここのことを話しておいたら学生たちの何人かはここを見に来たようだ. 私は最後にバスの運転手さんといっしょに来て慰霊.

ホテルに帰ってから, 夜は討論.

ニュースやインターネットの情報で思っていたこと(福島はもうダメ, 日本は終わった..みたいな?)と実際はかなり違うのに驚いたという感想は定番. U教授と学科事務長のL氏は, 現場で対処する人々の気概を感じた, 事故は良くないことだが世界に重大な教訓を示した, 韓国の原子力は事故前の時代には世界的にもうまくいっていてやや慢心状態にあったのが, 事故で意識を変えるようになった, など. 学生たちに対しては, こういう機会に実際に現場に立って見聞きしたことをムダにしないで, 自分の研究内容だけではなく, 原子力の問題を深く理解して人々に説明でき, 発言と行動によって信頼される専門家らしい専門家になってほしいと激励.

廃炉現場で作業に携わる友人のK氏はホテルの近くに住んでいるとのことで, 連絡したら来てくれて現場作業の様子など話してくれた. 20mSv/hにも達する高線量現場での作業がどういうものかなど, 貴重なお話. 学生たちも実際にここに家族で住み, 現場で作業する人と直に触れあうことで感じたところも多かったと思う.

f:id:cheonghongsa:20181218154855j:plain

12/12 JAEAの研究施設見学

翌日はJAEAの研究施設2か所を見学.

楢葉遠隔技術開発センター: 廃炉現場でロボットなどを遠隔操作で使いながら廃炉を進めるための技術開発, 実証試験をする施設. 高専による廃炉現場を想定したテーマのロボコンも行われている.

到着して案内の方に会ってびっくり. 私が東海村で研究所に勤めていたときの社宅のご近所さんがここの部長さんになっていて, 案内して下さった.

f:id:cheonghongsa:20181218155152j:plain

廃炉国際共同研究センター: 電力会社, メーカー, 研究所, 海外研究機関などいろいろなセクターから人と技術を集めて廃炉技術の研究をしている.

訪問する先々で口々に言われることは, 福島の実情を実際に見て感じたことを, 帰ってから周囲の人に伝えてほしいということ.

福島の廃炉はまだ30年, 40年かかると言われる. この学生たちの中から, もしかしたら近い将来その技術開発や作業に参加する人材が出てくるかもしれない.

智慧ある人々が集まって来て困難な廃炉が安全に進められるように, 地震津波原子力事故で傷ついた多くの魂が癒やされるように願う.

<合掌>