風来坊@真幸福知

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始まりは坐禅会のご案内, 思いつくことを何でも書いていたら星空系に... Started with Zazen session info. now almost astrophotos. 시작이 참선회 안내, 이제 별하늘 사진들.

AstroSurfaceで惑星の画像処理 (チュートリアルに日本語つけた)

AstroSurface

AstroSurfaceという惑星などの画像処理のフリーソフトがあって, 便利なので使うことにした.

AstroSurface webサイト: http://astrosurface.com/pageuk.html

フランスのLucienさんにより比較的最近作られたソフトらしいが, Registax, Autostakkertに続いてヨーロッパなどでは惑星写真などのスタックツールの定番になりつつあるような感じ. FacebookのBudget Astrophotographyグループでは使われているのをよく見かける.

日本語の資料は少なく, いくつかのブログで紹介されているくらいかも...

AstroSurfaceは2022年10月に最新版のT6が公開されている.

http://astrosurface.com/pageuk.html

Webサイトはフランス語, 英語など. "Download"でZIPファイルがダウンロードできる. PDFのマニュアル等は英語版がある.

Windows 64bit版が配布されている. ZIPファイルはインストーラではなく, 適当なところに展開して, フォルダ内にあるAstroSurface.exeを実行するだけ. ショートカットを作ったりスタートメニューに登録したりして使いやすくしとけばOK.

Linuxでもwineで快適に動作した:-) 例えば, /opt/astrosurfaceに入れておいて, "wine /opt/astrosurface/AstroSurface.exe"を実行するスクリプトを書いてデスクトップのメニューに加えておけば常用するのに便利.

 

便利だ!

機能はいろいろある. 

  • 惑星・月などの動画からのスタック(AVI, SER形式の動画, カメラのRAW形式が読める)
  • DSOのスタック(まだ使ったことはない)
  • wavelet分解による画像処理
  • saturation, white balance, gamma, levelなど色調整
  • rotation, crop, resizeなど画像形状の調整
  • 種々のファイル形式での保存

今までのところ惑星画像処理の定番は,

  • Registax: スタック, wavelet分解
  • Autostakkert: スタック (Registaxより速い)
  • その他(私が使ってた): Gimp(wavelet分解可, 種々の処理), RawTherapee(WBが使いやすい)

みたいな感じ. Registaxは画期的だったらしいが, 既に最終版から10年以上が経過している. スタックが高速になったAutostakkertを使うとwaveletをやるために他のツールが必要で結局Registaxを使うか, またはGimpプラグインを使うかだった.

Registaxのwavelet分解の機能は, 調整するところが多いし効果が強く出過ぎることもあって私は感がつかめず, 結局使わなくなった. 代わりに, 分解された画像が個別に見られて分かりやすいGimpプラグインを使っていた. RawTherapeeもwavelet分解ができるが, これもレイヤ毎のコントラストを調整して先鋭化するのがうまくできず断念.

スタック, waveletの後はトーンとか色の調整をして, 最後にホワイトバランスをやるのだが, Gimpは諸々の調整に便利だがホワイトバランスがやりにくく, このためだけにRawTherapeeを使ったりしていた.

Astrosurfaceは, スタック, wavelet分解による鮮鋭化, その後の色調整(saturation, white balance)をひとつのツールで済ませられるので, とても便利. また, LinuxWindowsソフトを動かすwineで使えたので, Linuxユーザーにも便利(wineはちょっとインストール容量を食うが(>1GB)).

 

チュートリアルに日本語つけた

日本でまだあまり使われていないのは日本語のマニュアルや資料がほとんど無いからかも... ということで, Webサイトからダウンロードできる英語版のPDFファイルに, 日本語の訳とコメントを付けたものを作成した.

AstroSurfaceの作者のLucien氏に配布の許可を得た(2022/10/17)ので, ここからダウンロードできるようにしました. ↓↓↓↓

AstroSurfaceのWebサイトで配布されている2つのチュートリアル(Analyze-RegisterとWavelets-Deconvolution)に日本語を付けて, さらに, トップページの画像にダウンロードとインストールの説明を付けたものを合わせて1つのPDFファイルにしてあります.

なお, チュートリアルは前のバージョンについて書かれており, 最新版のT6では少しダイアログボックスの内容に違いがありますが, 日本語はT6版を考慮して書いてあります.

お役に立てば幸いm(. .)m

 

使ってみた例

最近の木星(2022/10/1)の画像でAutostakkert!3(スタック)+Gimp(wavelet)で処理した場合と, AstroSurfaceでスタックとwaveletをやった場合を比較したのがこちら↓

(撮影はGS150CC(6"カセグレン)+TeleVue 3xバーロー. シーイングは悪くないがそれほどよくもない感じだった)

たぶんRagistaxのwavelet処理を使えばあまり差がなかったかもしれないが, Gimpとは明らかな差がでた.

Gimpのwavelet分解は, 波長毎に分解されたレイヤーを各々確認してパターンがあるレイヤーを複製して強めるという単純で分かりやすいもの. 短波長のところを選択的に鈍らせるwavelet denoiseというのもあって, これらを使うのだが, 細部をあぶり出す効果には限界があるのかもしれない.

一方で, とてもシーイングがよくてスタックしただけの元画像の段階でかなり詳細が見えるような場合だと, 処理方法の差があまり出なかった(昨年夏のもの)↓

(撮影はGS150CC(6"カセグレン)+笠井 2xバーロー. シーイングは最高だった)

このときの, スタックだけした元画像はこのようなもの↓

 

ということで, シーイングが悪いときの画像では, ちゃんと惑星写真用に作られたwavelet分解による鮮鋭化処理ツールはGimpみたいな汎用的なものと比べてずっと効果が高いということなのだと思う.

AstroSurfaceをちょっと使ってみた感じとしては, Analyze, Stack, Wavelet処理ともにこれまでのツールよりも速いような気がする.

Linuxで, これまでVMWindowsを使ってAutostakkertやRegistaxを動かしていたときは, VMの起動, 大きな動画データファイルの入った外付けディスクのVMへの接続などの手間もあり, 数千コマの動画のスタックと, ホストとVMを行ったり来たりしての操作はちょっと面倒だった. wineでAstrosurfaceを使うとVMに関わる煩わしさもなく, ソフト自体も軽快でほとんどの後処理もひとつでできるので, かなり楽になりそう♪♫

 

Artifact??

AstroSurfaceを使ってみたら良いことばかりじゃなく, 問題も出てきた. 以前R200SSで撮った火星(f=800mm, x3バーローでは像がとても小さい)をスタックしてみた所, Autostakkert!3で問題なかったのにAstroSurfaceではピクセルに由来するような感じの格子模様が出てしまった.

左がAutostakkert!3でスタックしたもの. 像が小さいので画素を3x3に増やす"drizzle x3"をかけている. 同様の処理はAstroSurfaceだとスタックの時に"Resize 300%"なのだと思うが, そうやって得られた右の画像には格子模様が現れていて, これだとwaveletで細部を強調しようにも格子模様のノイズが増幅されてしまう.

この火星の画像では, スタックのときサイズ拡大しなくても同様な格子模様が出た. ピクセルで交互に少し色が変わっている.

同じ日に撮影した木星で同様にAutostakkert!3で"drizzle x1.5", AstroSurfaceで"resize 150%"でスタックした場合を比べてみると, 上の火星のようなArtifactは見られない.

そもそもどこで格子模様が生じるのか気になるので, 動画の再生のときの表示画像をスクリーンショットで比べてみた.

Autostakkert!3の再生画像と比べると, AstroSurfaceの再生画像はこの時点ですでに格子模様が現れているような気がする.

小さすぎる像(上の火星は元の画像で直径がわずか45ピクセル)が問題なのか, 色(RAWデータのディベイヤー)が問題なのか?

ちなみにこのテスト画像の元の動画はZWO社のASI385MCカメラでキャプチャソフトASICapで"RAW8"モード撮影したAVIファイル. AstroSurfaceで読み込む時はベイヤー配列を"RG(orGB)"としている(それでまともな色になるから). もしかしたら"RAW16"モードで撮影したら良くなる!? (ファイルは2倍のデカさになるが)

とりあえずこの問題を回避する方法は, スタックはAutostakkert!3を使い, その後の処理をAstroSurfaceでするということになる.

まあ, ここら辺を気にしつつ使ってみることにする.

 

おわり

追記: Lucien氏のアドバイス

格子状のアーティファクトの件で, 作者に問い合わせしてみた. ASIのRAW8ファイル(AVIフォーマット)の読み込みの際のdebayerの問題は分からないが, 以下のアドバイスをもらった.

  • キャプチャの段階での保存形式は, AVIはコーデックがいろいろあって問題が出ることがあるのでSERにする.
  • スタックのときのTileは48pixより小さくするのは月など微細構造が写っている場合だけにすべし, 惑星像が100pixより小さい場合はTileを使わず"Global"にするのがよい.