菅首相が6名の社会科学系の先生方を任命拒否したということで話題沸騰の「日本学術会議」について, 最近いくつか記事が出ていたので...
渡部氏: 日本の安全を脅かす日本学術会議を抜本改革せよー年収8000万で研究者招聘, 研究成果を掠め取る中国
伊東氏: 日本学術会議, いっそ改組されたら? ー老人会・蛸壺温床・政策提言僅少の「日本ガス抜き会議」
勝手にまとめると...
- ほぼ60代が新会員という老人会で政府の必要とする政策提言などを行う実行力はない
- ある分科会では何もしない大御所の先生方に若手がタダ働きでこき使われて提言を書いたりしていた実情
- 各国の学術諮問機関はちゃんと政府の必要とする政策提言をしているのと比較すると無意味な団体になっている
- 戦後の学者の反省から軍事に関係する研究に絶対加担しないというスタンスを堅持しているが, 大学でする基礎研究レベルの科学技術に軍事用と民生用の明確な区別は付け難く, この制限圧力がお金と人の有効な流れを妨げている
- 防衛省予算による研究を禁ずる一方で中国との人材交流(実質的に技術流出)を奨励している危険
思うに, 防衛省予算と大学の関係については, 大学の研究は公開を原則とする(論文を発表できないと業績にならないし)ならば, 防衛省予算で基礎研究をしても問題ないと思う(兵器に直結する軍事機密は大学には任せられないし, 大学の研究者もやる気がでないでしょう). 「平和」は誰もが頼まれなくても希求するが, それを建前にして研究リソース獲得の自由を縛ってきたのが学術会議だったのではないか?
今回任命されなかった6名は全て社会科学系で, 憲法, 法律, 史学, キリスト教という分野. 「真理」が比較的客観的な自然科学の世界とは違い, 学術的主張と個人のイデオロギーが隣り合わせとなる分野とも見える. 期待する政策提言の有用性を考慮していて, 来て欲しくない人というのはあり得ることと思う.
自然科学者はたとえ神の啓示とかによって研究のアイディアを得たと強く自覚していても, 学術的主張の場ではそんなことは一言もいわないで事実と論理によって話す. これと憲法学者とかの言いようとはだいぶ違う気がする.
いずれにしても, この騒動で問題の団体が整理されて国のためになるシステムに修正されることを願う.
<合掌>
追記(10/12)
BLOGOSでも関連する記事があった. 医学系の研究者の方. 任命されなかった方々の研究者の評価が低かったことなども書かれている.
今回内閣に否定されることとなった学術会議内部での人選は, 身内を後任に推薦するなど透明性も民主性もないものだと. 過去の提言にしてもきちんとした科学的なバックグラウンドから出てくるものではなく, 思想的・政治的色彩の強いものばかりで, 科学の名のもとに一部の思想に不当な権威づけをして主張しているように見える.
本当に廃止して別の組織を作るほうが良さそう.
追記2(10/15)
学術会議が, 自衛官が大学院で学ぶ機会を奪ってきたという話. 日本の自衛隊は外国の軍と比べて学歴が低い, 学位取得者が少ないと言われる. 体系的な知識と学術経験の習得は防衛力の質の向上に不可欠のはず. 学術会議がこの重要な部分に横槍を入れて国防という政府の最重要課題の1つに悪影響を及ぼしてきたのならば大問題.
追記3(10/16)
現代ビジネスの記事:
gendai.ismedia.jpこの中で紹介されている, 北大で微細気泡による船舶の抵抗軽減の研究が防衛省の研究予算に採択されたのに学術会議の圧力で辞退させられた件. 奈良林先生の国家基本問題研究所への寄稿.
追記(10/18)
Newsweek日本版の記事:
問題の本質がよくまとまってるかも.