風来坊@真幸福知

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APP (Astro Pixel Processor)にする?

天体写真(DSO)の画像処理にはLinuxで使えるたぶん唯一のフリーなスタックソフトSirilを使ってきて, 最近使い方であいまいだったところを詰めてそれなりにベストな結果が得られるようになっていたが, ちまたでAPPというツールの名前を見かけることが多くなり調べてみたら, Linuxでも使えて, フリーじゃないが値段はそんなに高くない.

30日間のフリーお試しライセンスがあり(機能制限なし!), ダウンロードしてみたらパッケージサイズは100MBくらいで, それほど巨大じゃない. ということで使ってみることにした.

感覚的にも使えそうなUIだが, なんとなくやったらSirilのときよりもややノイズの多い仕上がりになった. でも星の色はもっときれいに出そうな感じ. 色調整をがんばらなくてそのくらいなのでちょっとした感動である. それで, ダーク・フラット処理をちゃんと調べてノイズの処理がどうなるかやってみたら...

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Monkey head nebula (NGC2174): R200SS, GSO 2" coma corrector, Sightron QBP filter X-E2 ISO6400 21x280s

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M81-82: R200SS, GSO 2" coma corrector, Sightron LPR-N filter X-E2 ISO3200 11x280s

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Centaurus A: R200SS, GSO 2" coma corrector, Sightron LPR-N filter X-E2 ISO3200 6x280s

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Leo triplet (M65, 66, NGC3628): R200SS, GSO 2" coma corrector, Sightron LPR-N filter X-E2 ISO3200 9x280s

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Needle galaxy (NGC4565): R200SS prime, ASI385 gain 300 expo. 7x200s

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M51: R200SS prime, ASI385 gain 300 expo. 10x200s

APPのマイ・ベスト・レシピ

設定は, 1) Load, 2) Calibrate, 3) Analyse stars, .... 6) Integrate のそれぞれの段階の設定タブでするようになっている.

基本的に, Loadでもとの画像ファイルを指定し, Calibrateでダークやフラットなど前処理用のマスターファイルを作ってライトファイルに割当て, Analyse starsで星を検出し(アラインメントに参照するため), あとはIntegrateで自動的にやってくれる感じ.

その他にも便利な機能がいろいろあるらしい("9)Tools"). フラットで補正しきれない街明かりのカブりなどを補正するremove light pollutionなど.

以下の方法は, Sirilのマイ・ベスト・レシピと同様に,

  • ダーク減算はバイアス込みのCFA画像でやる(バイアス抜きので最適化とかはしない)
  • フラットは光学系の周辺減光(中心対称と仮定)の補正だけとし, LCDグレー画面をカメラを回転しながら40コマくらいとってスタックしたものからノイズのないスムーズなマスターフラットを作る

という感じで, 手間をかけずにそれなりのクオリティをという落とし所です.

MasterFlatの作成 (光学系/センサ/ISO設定ごとに予めやっとく)

1) Load

 "Flat", "Bias" (flat画像撮影時の)ファルをロード

2) Calibrate

  以下のように設定しておく.(この設定は以下も同じ)

  MasterDark

    integrate: automatic

  MasterFlat

    integrate: average  (20コマ以上の場合はaverageが推奨らしい)

    outlier rejection: sigma rejection

    "create rejection map"のチェック外す

    normalize: multiply

    blur: smooth model (中央値を使う"median"はXTransセンサの場合補間による変なノイズが出る. smooth modelは関数近似でノイズのない滑らかな分布を作る)

  BadPixelMap

    creat BPM: disable (BPM=bad pixel mapはダークが20コマ以上あるときに意味があるらしい. XTransセンサだと使わない方が良いかも, ということでdisable (無効化))

  Cosmetic Correction

    全部チェックは外しておく

  その他...

    "create MasterBias, -Dark, -Flat"にチェック

=> "creat Masters & assign to Lights"を押すと, マスターフラット(MF-...)ができる. これを今後使うため光学系, センサ, ISOごとに分かるようにして保存しておく. マスターバイアス(MB-...)もできるが, 今後は不要なので消してOK.

MasterDarkの作成

1) Load

  "Dark"ファイルをロード

2) Calibrate (設定は上と同じ)

  "separate darks acc. to exposure time"は場合に応じて.

  (ロードしたファイルが複数のISO/露出時間のものが混ざっていて, ダークを各々に対して作りたい場合はチェック)

=> "creat Masters & assign to Lights"を押すと, マスターダーク(MD-...)ができる.

ライトフレームを読んで処理する

1) Load
  "Light"と, 予め作成してある"MasterFlat", "MasterDark"をロード

  "Enter Deepsky object name"のところに適当なタイトルを入れる(出力ファイル名になる)

2) Calibrate (設定は上と同じ)

  "(re-)assign Masters to Lights"を押すと, マスターダーク, フラットがライトファイルに関連付けられる.

3) Analyse stars

  "Analyse stars"を押すと星像が検出され, 分析される.

  下のフレームウィンドウで右クリックして, "quality"か"star shape"を選択すると, それらによってソートされる. 上が良いフレーム, 下が悪いフレーム.

  各フレームでカチカチすると, プレビューが表示される. 星像が流れていたりする悪いフレームはチェックを外して除外する.

0) RAW/FITSタブの"algorithm"

  プレビューはRAWデータを現像したRGBが表示されているが, ここを"no interpolation"にすると元のCFAモノクロ画像が見られる. ノイズがちゃんと除去されているかどうかはこれで確認できる.

  プレビューの上にある"linear(l)", "l-calibrated"の選択で, ライトフレームの元の画像とダーク/フラット処理(calibration)済みの画像が見られる.

6) Integrate
   pixel integration
     filter: lanczos-3
   INTEGRATE
    mode: interpolation (これでdizzleなし; dizzleはノイズを増やすので使わない)

=> "integrate"を押してしばらく待つ.

鐘がなって(笑)仕上がり画像が表示されたら, 右側にある"save"を押して保存する. "stretch"にチェックするかしないかによって, 保存される画像はヒストグラムをストレッチしたものまたは元のものになる.

画像形式は"TIFF", "16bit"にしておけばGimpやRawTherapeeでレタッチできる.

長所・短所(Sirilとの比較)

仕上がり画像は, Sirilのマイ・ベスト・レシピとほぼ同じくらいになった.

長所は...

  • Sirilと比べてUIが使いやすく, 操作が簡単.
  • とくにプレビューウィンドウでの画像の拡大・縮小・移動は直感的で画像のチェックがしやすい.
  • Sirilが前処理やアラインメントの段階ごとに全ての出力ファイルをFITS形式(サイズがでかい)で保存するのですぐにGBオーダーでディスクを食うのに対し, APPでは意図して保存しない限り最終結果だけがFITSで保存されるのでディスクの掃除が不要.
  • Sirilでは前処理をCFA画像(RAWのモノクロ画像)でするのかRGB画像にするのかユーザーが判断する必要がある(結果がかなり変わる)が, APPでは基本的に全ての処理をCFAでやってからRGBに変換することになっているらしい.
  • 仕上がりはSirilで後処理をがんばった結果とほぼ変わらないが, 星の色や背景のWBは後で苦労しなくてもいい感じになる.
  • 便利な機能がいろいろあるらしい.

短所は...

  • プレビューは使いやすいのだが, 表示を元画像と前処理済み画像で切り替える時に, その都度現像するので, 画素が多い画像だとちょっと遅い.
  • ユーザー設定を保存してくれない. (この機能の追加は以前からユーザーの要望事項で高い優先順位のはずだが, 未だ...) だから起動するたびに上の設定項目をいじらないといけないのが面倒.
  • 有料. でもめちゃ高いわけじゃない. (Ownersライセンス(つまり期限なし)で165ユーロ)

というところ.

その他

ちなみにLinuxおたくじゃない天文オタクの方々には, 日本ではAstroArtsのステライメージというソフトが普及している. しかしこれがWindows版のみで, しかもFujifilmのXTransセンサのRAWファイルに対応していない. お値段は約3万円. だから, 基本的にLinuxオタクやFujifilmオタクは除外されているという状況.

海外のソフトではフリーのSirilも各OS版があってFujifilmにも対応している. APPもそう. なお, PixInsightというもっとすごいのがあるらしい(もう少し高い, パッケージサイズは300MBくらい)が, 価格と使いやすさではAPPがとっつきやすく, 広まりそうな予感.

<了>