風来坊@真幸福知

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シンデレラ・モンク(Cinderella Monk)

Cinderella: 継子扱いされる者, 隠れた美人(人材,逸材), 一躍有名になった人...(研究社リーダーズ英和辞典) (cinderが灰の意味, シンデレラは"灰かぶり"と和訳される)

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修行僧, というと何をしている姿を連想されるだろうか? 坐禅, 読経, 雑巾がけ, 僧堂の食事作法...?

私が某大本山に半年ほどお世話になっていた時, 私の所属は参拝客の申し込みにより法要を営む祠堂殿というお堂だった. 多くのお寺で祠堂というと, 本堂からちょっと張り出した, 歴代住職や檀家の位牌が並んでいるスペースという場合がよく見られる. 大本山の祠堂殿は普通の寺の本堂より大きいくらいのお堂で, 数千枚の位牌が都道府県別に分けられたスペースに整然と並んでいる. 本尊は中央の奥に祀られた地蔵菩薩. 入り口には長さ18m, 重さ250kgの大数珠がある.

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<写真は某大本山ではありません:-)>

お寺に香炉は必需品だ. 香炉には線香を立てるものと(焼香で)抹香を焚くものがある. 線香の方は線香の根元の部分が燃えずに残る場合がある. 抹香の方は抹香の燃えかすの黒い粒がたまってくる. これを網や篩(ふるい)で濾し, きれいで平坦な灰の状態にすることを"香炉を切る"または"香炉を直す"という.

さて, 祠堂殿には位牌壇の香炉(線香用)が20くらいあったと思う. それから本尊の前に特大の香炉(ボス香炉と呼ばれる), 抹香用は焼香に使う角型のものが数個, 導師の丸いもの, それからお堂の入り口に置く参拝者用の大きな物--これは市販の香炭(紫雲炭)ではなく, オガ炭(おが屑を整形したオガライトの炭)を4本灰に埋めて使う(終日火が保つ). 二人一組で順番に回る"当番・加番"になった日にはこれら全ての香炉を切ることになる. また, 祠堂殿では一日に最大で5回の法要が営まれるが, その際に使う香炉はその都度切り直す. 灰にまみれて暮らす日々である.

香炉切りはアートだ. 燃えかすを取り除き, 固まった灰をかき混ぜてほぐし, 香炉を揺すって流動化させほぼ平坦にした後, 銅やステンレスの板に柄のついた"香炉切り"という道具で表面をなでて平らにする. 最初はなかなかうまく行かず何度なでても平らにならない. 思いつめてペタペタやっているうちに灰が押し固まってガチガチになってしまったりする. 実は平坦ではなく, やや中央が盛り上がった形にするのがコツである. 熟練すると香炉を2回転くらいする間に形が整う. 灰濾しの量を最小限にするのも重要だ. 線香の燃え残りや抹香のかすのある部分だけすくい上げて濾せば, 全体を濾すのと比べて大幅な時間の節約になる. 位牌壇の香炉の場合は, 堂内全体に分布する香炉を一箇所に集めてきて作業するのではなく, 道具を持って回ってその場で香炉を切るのが効率的である. こんなことを試行錯誤しながら見出して, みな香炉切り職人になっていく.

香炉切りにもそろそろ慣れた夏のある日, 灰濾しの作務をしながら"シンデレラ"というのが灰だらけという意味だったことをふと思い出した.

"ここの雲水(修行僧)はシンデレラ・モンクだな..."

周囲の若い雲水たちには意味が通じなかったみたいだ. シンデレラの絵本を何度も読んだ(読まされた?)父親だから知ってるのかも.

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明日は当山の施食会. いつものように香炉切りをしながら, 5年前の本山修行を思い出す.