風来坊@真幸福知

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「人類の涙をぬぐう 平和の母」韓鶴子氏自叙伝のこと

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2020年2月上旬, 新型コロナウィルスが世界に蔓延するようになる直前に, 韓国ソウルで開催されたUPFワールドサミット2020に, 宗教者の平和大使として参席させていただいた. この会議の中で韓鶴子(ハン・ハクチャ)氏の自叙伝出版の祝賀会があり, この本(韓国語版)を頂いた. それで初めてこのような本が出版されたことを知った.

あれから半年以上が過ぎ, そろそろこの本について何か書いておかなければと思って今までに浮かんだことたちを書き留めておく.

この本には「前半」がある. 2009年に出版された, 韓鶴子氏の夫でありUPF共同創設者である文鮮明(ムン・ソンミョン)師の自叙伝「平和を愛する世界人として」である. それが出版されたときの驚きと興奮と比べると, 今回の韓鶴子氏の自叙伝発表は正直なところ唐突な感じがした. しかし考えてみると, モーゼの石板が2枚あったのと同じように, 夫婦でメシアとして, 父母としての使命を担う方として夫とペアの自叙伝が出るのは当然かもしれない.

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ところで, 文師夫妻は1992年に宗教会議など公的な席上で「自分はメシアであり救世主であり,人類の真の父母である」と宣言して大きな波紋をよんだ. この宣言は, この方が本当のメシアなのか偽物なのかの判断を我々全てに突きつけた. 「私」が下す判断は自身と後孫の運命に必ず報いとなって還る. 軽々しく片付けられない, ある意味で恐ろしい時代(歴史が語る)を私たちは生きている.

ともあれ, 自分を含め現在に至るまでUPFの活動に参加している様々な背景をもつ多くの人たちは, 彼らを本物として受け容れた. 最初に述べた今年2月の会議では, あちこちで国家首脳級のVIPや数万名を率いるような宗教指導者の面々が, 韓鶴子総裁を「True Mother」, 「Mother of Peace」と敬愛を込めて呼び, 文鮮明韓鶴子夫妻が予てより推進して来られた平和運動と祝福結婚の行事を賞賛する姿に触れた. このように「キリスト宣言」をして, その後にも社会的に受け容れられ続けた方が過去にあっただろうか?

ということで, これらの自叙伝の価値は, 救世主(少なくともその自覚で人生を生きてきた方)がその人生を自分の言葉で綴られたものということにある. そして, この方々は, その「メシア宣言」の言葉にもあったように, 「メシア」「救世主」という概念にある種の革命をもたらした方々でもある.

新約聖書ヨハネの黙示録(19:11-12)には, 再臨のメシアが白馬に乗って登場するシーンがある. その中で「彼以外にはだれも知らない名がその身にしるされていた」という一節がある. さらに, 「彼は血染めの衣をまとい, その名は「神の言」と呼ばれ, そして, ...」と続く.

文師夫妻は, 再臨のメシアとは人類始祖の堕落によって失われた「真の父母」の立場を取り戻して人類を天(創造主)の子として再生する者であるという「メシア観」を提示され(詳しくは「原理講論」), 自ら実際にその使命を果たすために献身してこられた. 私が初めて「メシア=真の父母」という話を聞いた時にとても違和感を感じたのだが, この聖句を見つけた時に, その違和感が「だれも知らない名」つまり従来どこにもなかった概念だったのだという納得に変わったのを覚えている.

2つの自叙伝には文師夫妻の人生が並大抵の苦労ではなかったことが記されている. 上記の聖書の一節にある「血染めの衣」は文字通りであり, その壮絶さと不自由さは, 誰も望んでしたい仕事ではない. ただ, 自分を完全に捨てきったところで歴史上の誰も出会ったことのない天・創造主と通じるという世界には, そこに至ったことのある人にしか理解できない「神のみぞ知る」喜びがあるのかも...とも思う. (文師によって明かされた「神の姿」もまた注目すべきものだと思う. 神に対して疎外感や反感を抱く人は多いが, それは子に捨てられた親の姿であることに気づく.)

これらの自叙伝を読んで, 自画自賛が多いというちょっとネガティブな感想を持たれる方もいるようだが, これについて私は既に他界した祖父(文鮮明師と同じ1920年代生まれ)の話しっぷりを思い出したりする(笑).

さて, 文鮮明師の自叙伝には, 妻である韓鶴子氏が「私の妻, 韓鶴子」「この上もなく善良で貴いあなた」(第5章)として紹介されている. 鶴子氏が三代にわたる母系家庭で再臨のメシアが(空から降りてくるのではなく)肉体をもって地上に生まれると信じるキリスト教の霊的集団の中で育ったこと, まだ10代の時に40才になろうとする文師に呼ばれ, 突然結婚するのだと告げられて素直に従ったことなど, 類を見ない従順な女性, そして持つもの全てを「与えきる」母性の持ち主として描かれている.

韓鶴子氏の自叙伝では当然だがそれが逆の視点から描写される. そして, 生まれ育ち, 文師との出会い, 結婚, 文師とともに天の摂理の中心的な責任を担いながら生きてこられた人生が, ただ従順によるのではなく, 天性から文師と同じような霊的・天的な視点に立った積極性をもって天に仕える方であったこと, それによって強固な意志をもって夫を支え, 試練に立ち向かい, 乗り越えてこられた姿が浮かび上がる. メシアと対等にやりあえる女性, そしてたぶん, 夫婦の関係においては世のどんな女性よりも苦労と犠牲を払った方だと思う.

青春まっさかりの10代で20以上年上のメシアを自称する中年男に嫁ぎ, 人類の母の使命を受け容れて10人以上の子を産み, 神に狂った男と人生をともにし, さらに先立った夫との約束を胸に世界を巡ってVIPたちの面前に立ち, 小さい国の規模を超えるような運動を率いることのできる稀有の女性.

文師によって, メシア=真の父というのは人類を救うと同時に神を救った男というメシア像が示されたと思うが, それに比較すると, 韓鶴子氏によって示されたメシアの妻=真の母は, メシアに救われた最初の女性というよりは, メシアを補完し救った女性と言えるのではないだろうか?

なぜ文師よりも20以上も若い韓鶴子夫人が最終的にメシアの妻になったのか, ということについても, もしかしたら必然的な摂理的な要請だったのではないかとも思う. 文師による摂理の歴史は紆余曲折だった. 韓国には「初不得三」(初回で失敗しても三度めに完遂できる)という言葉があるそうだが, 文師は聖書の物語を解いて, 摂理的使命を負った人物がそれを果たせないと, 3度まで歴史が繰り返して, 段階的に使命が完遂されてきたことを明らかにされた.

文師が指導してこられた運動も例外ではなく, 40年の延長があったという話もうかがっている. 文師がどんなに丈夫な体をお持ちであったとしても, 100年に満たない人生で成し遂げられないことを予め天は知っておられたために, 若い夫人によってもう少し延長した時間の中で地上でのメシアの指導を継続される作戦だったのではないかと思う.

もしかしたら韓鶴子氏は若い年でずいぶん年上のメシアに嫁ぐに当たって, すでにそのことを察知しておられたのかも知れない. そういう想像も含めて, このような女性はどんなに想像を膨らませても他に思い当たる人物がなく, 人類の母として脱帽敬服する他ない.

本の後半になると壮大な運動の展開の内容になるが, もっとも印象的なのは冒頭である(私が登場人物が増えるとついて行けなくなるからかもしれないが..(笑)). 日本に支配されていた時代の朝鮮で幼子だった母を抱きながら3.1運動で太極旗を振った祖母, 同じ祖母に鶴子氏が背負われて1945年の光復節を迎えたこと, 夫である文鮮明師と過ごした日々と2012年9月に迎えることとなった夫の聖和(逝去), それから3年間毎日欠かさなかった墓参と夫との霊的交流など, 後に夫に代わって壇上に立たれた強い姿の背景にある内面は, 何か人をほっとさせるような, しみじみとした共感を感じる.

文鮮明韓鶴子夫妻の運動には常に, そういう個人の深い心情世界の悟りや努力や祈りがやがて周囲へと拡がり, 十年, 二十年を経て世界的な規模の動きとなった歴史がある. 文師が解かれた聖書の物語の中の「原理」が, そのまま現代の歴史の中に現れる, まさに「事実は小説よりも奇なり」である.

文師夫妻の自叙伝はともに「平和」をテーマとしているが, これは「神と人との平和」から始まり, 家庭を基礎として, 国や宗教の壁を超えて世の中に広がる平和である. 1990年前後に世界の共産主義の大半が終焉に至った後, 民主主義の世界が定着するかのように見えたのもつかの間, 宗教・民族間の怨恨を背景とした地域的紛争は冷戦下での抑制が解けて表面化し収集がつかない, さらに民主主義・自由経済圏もいろいろなところで限界を露呈しているように見える.

そして今, コロナ禍の下での人的交流や経済の停滞.

神を忘れて傲慢になった人間たちがバビルの塔を建てようとしたとき, 言語がバラバラになって「神抜きの人間的協力」は瓦解してしまった. 私には, この物語と現代の状況が似ているように見える.

人間の力だけで解決できると思うな, 天の声に耳を傾けよ, という夫妻の警告に振り向く時になっていると思う.

ちなみに, これらの自叙伝の原語版はいずれも韓国の金寧(キムヨン)社が出版した. 有名人の自叙伝を手がけている会社としてよく知られている. 文師のものを出版しようとしたとき, 特に宗教的な反発からキリスト教勢力の逆風があったそうだが, 当時の社長の朴恩珠(パク・ウンジュ)氏は熱心な仏教者で, 毎日欠かさずお釈迦様に108拝を捧げ, その霊感によって出版を判断するというやり方で仕事をしてきた方であり, 批判をものともせず本を世に出されたという逸話がある. お釈迦様もこの方々をよくご存知のようである.
<合掌>

 

日本語版書籍情報:

「平和を愛する世界人として」, 文鮮明著, 創芸社2011(増補版) ISBN: 978-4-88144-148-0

「人類の涙をぬぐう平和の母」, 韓鶴子著, 光言社 2020 ISBN:978-4-87656-379-1

「原理講論」, 世界平和統一家庭連合編, 光言社 2015 ISBN:978-4-87656-364-7