(The 11th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety)
今回の韓国行きの主目的は第11回韓日原子力熱工学&安全シンポジウム(今回は韓国開催で韓日, 日本だと日韓になる). 11回めで20年めのanniversaryを迎え, 初回と同じプサンのリゾート地でありコリ原子力発電所にも近いヘウンデ(海雲台)のパラダイスホテルで開催された.
<昔の写真が貼り付けられたパネル>
<Welcome reception>
<Paradise Hotel: 20年前は海岸に屋台が並んでいたという>
この会議, 私が日本で某研究所に就職した少し後(子が生まれた翌年ともいう)で始まり, 日本からは直接参加する機会がなかったが(上司が行ってた), ポハンで仕事をしていた間に2度, 韓国のプヨ(扶余, 百済の都)と日本の京都で参加したことがある.
原子力の, とくに安全に関わる熱工学技術は国際的な協力によって高い水準を共有することが必要である, という認識は1986年のチェルノブイル発電所の重大事故, それに続くソ連を中心とした共産圏の解体の過程で強く共有されるようになった. チェルノブイル事故では放射能がスウェーデンで最初に検出されるなど, ひどい原子力事故の影響は人間の事情などものともせず国境を超える. それで冷戦終結後(チェルノブイル事故もソ連崩壊にかなり影響した), 東西の壁によって塞がれていた科学技術交流が堰を切って始まり, 西側の原子力規制のやり方や技術が東側の原子力発電の安全性改善に役立てられた. 旧ソ連の核兵器に関わった科学者たちが職を失って(技術と共に)流出し, 核兵器に対して貪欲なテロリストたちの方へ行かないように, 彼らを安全研究のために雇った...という事情もあったときく.
さておき, 日本と韓国は共に囲む日本海(あっちからは東海ドンヘ)の沿岸に多くの原子力発電所を持つ. 福島第一の事故は広い太平洋側だったために, この狭い日本海を汚染せずに済んだという点では, 敢えて言えば不幸中の幸いだった. もし日本海で同様な事故が起こったら..と考えるとゾッとする.
だから, 原子力に関わる者としては, 民族感情や政治的な葛藤はさておき, 高い技術と責任感を共有して原子力を運営したいという使命感がある.
また, エネルギ事情を見ても, 両国は共に化石燃料を不安定要素の強い中東に依存していて, 発電や送電技術ではかなりいい線を行っているものの資源の面でのリスクを抱えているという共通点を持っている. その面で原子力は外せないエネルギーオプションの一つである. (..はずだが, 韓国は今文在寅政権がかなり暴走中)
<山口先生のプレゼンの一部: 各国のエネルギ事情を比較>
今年は20周年記念ということで, このシリーズの会議を始めた当初の関係者の皆さんも参席, 昔話も披露された. 同時にこの会議は若い世代の交流にも力を入れており, 学生や若手のセミナーも会議前に開かれている. それで関係する専攻を持つ両国の大学の大学院生たちもたくさん来て, 昼夜を通じて(笑)交流している. おじさん世代としてはカラオケも恒例行事となっていて, 日本語・韓国語・英語の歌が交錯する.
ここに集う人たちの口からよく聞かれるのは, 日本人と韓国人は(まあ人にもよるだろうが)個人的に知りあえばとても近くて理解しやすく, 親しみを感じやすいということ. 学生たちも(まだ場馴れしない英語でも)よく話が盛り上がっている様子が見える. (言語の構造が似てるので英語習得の悩みも若干共通?)
今, 研究費の削減とかの諸事情で若い人の海外での発表や外国滞在の機会が減っているような感じだが, ただ論文を海外の雑誌に発表するのと違ってナマの人間同士の交流が本当に必要だと思う. 友といえる人が互いの国にいて同じ仕事をしていてこそ, 互いの技術を信じることができ, 問題を共有して解決することもできるというモノだろう. そういう意味でこの会議による若手の交流というのはとても重要な将来の疎通への担保となっている, と思う.
<会議後, POSTECHを訪問した一行があった:-) 実験室見学>
<サ厶ギョプサルを囲んでの学生たちの熱い議論(笑)>