「私はいま〜南のひとーつぼーしをーみあーげてーちかったー」今井美樹さんのPRIDEという曲の一節に出てくるこの星は, たぶん南のうお座の1等星, フォマルハウト(Fomalhaut).
秋の夜空には1等星が少なく, 日本から見る限り, 白鳥座のデネブと牡牛座のアルデバランの間ではフォマルハウトが唯一の1等星. (もう少し南に行くとエリダヌス座の端っこの1等星アケルナルが見える) 白鳥座も牡牛座もずっと北の方にあるから, この辺りの南の空にはホントに明るい星がない.
それで, 秋の南の空にポツンと光る孤独な星という感じに見える.
(Nikkor Ai-S 135mm F2.8=>4, Fujifilm X-T20 ISO1600 20x30s (窓から撮影), APPでスタック, 光害補正, RawTherapeeで調整)
「南のひとつ星」という呼び名は, 古くからあるわけじゃなく野尻抱影氏(英文学者, エッセイスト, 天文風俗学者)が著作の中で自分がつけた仮称だと述べているそうだ.
ところが, Wikipediaを覗いてみるとこの星, 孤独に見えるわりには仲間がいたり, 惑星を持ってるんじゃないかと言われたり, いろいろ話題が多い.
ひとつの星に見えて望遠鏡で拡大すると実は2重星とか3重星とか...というのはよくあるが, フォマルハウトの場合は望遠鏡で拡大しないと見えないような近くじゃなく, 肉眼でもしっかり離れて見えるところにある星が, 実は重力で引き合う伴星という話(こういう場合も「連星」というのかな???).
「フォマルハウトB」と呼ばれる伴星は, 「南のうお座TW星」という別の名前がしっかりついていて, 上の写真ではフォマルハウトから写真の縦辺の1/3ほどの下に行った所に写っている(明るさ6.5等).
ちなみに地球からフォマルハウト(連星系の主星ということでフォマルハウトAとも呼ばれる)までの距離は25光年, フォマルハウトAとBの間は約1光年. 比較的近い所にあるから, 重量で引きあう2つの星もけっこう離れて見えるということなんでしょう.
さらに, フォマルハウトCと呼ばれる「LP 876-10」はフォマルハウトAの北西へ5°以上離れた所にある(写真には入ってなかった, ずっと上)赤色矮星(明るさ12.6等)で, 2013年に星の運動の分析から伴星と判断されたという. フォマルハウトAとの実際の距離は2.5光年.
ということで, 孤高の変人に見えるのに実は家族がいるってところになんとなく親しみを覚えたりする(笑)
さらには, ダストの輪っかがあって2012年にはアルマ望遠鏡(ミリ波電波干渉計)で詳細な画像が得られていたり, 惑星(フォマルハウトb)があるんじゃないかとか, ないんじゃないかとか, いろいろあるらしい.
【了】