先日は条件の良くない西に沈みかけのかもめ星雲ということで, あまりちゃんとした比較ができなかったので, 今度は明け方に昇ってくる夏の銀河界隈にある赤モノでやってみた.
ちなみに, X-A1は2013年発表のXシリーズ廉価版(ベイヤーセンサー搭載), X-T20は2017年発表のXTrans CMOS IIIを搭載した中堅モデルなので, ノーマルでの性能は後者が上(ISO感度も1段高い設定が可能), 使い勝手(EVFやその他機能)は数段上. なので, 赤い星雲に特化した用途で, X-A1のセンサ前のフィルタを除去したIR改造機 (hoshizoraclubさんによる) はもっと良いってことになるのか??という比較.
M8(ラグーン星雲) & M20 (三裂星雲)
X-A1改造機:
X-T20ノーマル:
X-T20の方は, 撮影のときに赤緯軸のクランプを締め忘れていて縦方向にズレが出てしまった. それで微光星の写りが悪いかもしれない. そこを考慮すると, 仕上がり画像はほぼ互角かも. 処理なしのひとコマだけの画像(RAW=>JPEG変換してサイズを落としただけ)で比較すると...
X-A1改造 | X-T20ノーマル |
星雲の赤く淡い部分の出方は, 改造機の方が良い.
NGC6357(ヒガンバナ星雲) & NGC6334(出目金星雲)
X-A1改造機:
X-T20ノーマル:
X-T20で1コマ撮影した後でEVFで画像を確認した時は, 同じ露出だと改造機と比べてかなり写りが悪い印象だったので, ISOを1段上げ時間を1分伸ばしてISO6400, 3分の露出で撮った. 撮影効率を比較する意味で, 上の2つの仕上がり画像は総露出時間(要するに撮影の所要時間)をほぼそろえてある(X-A1改造機は2分x10コマ=20分, X-T20は3分x7コマ=21分).
1コマだけを比較してみる. 露出(ISO感度設定と時間)が違うので, X-A1改造機の方の画像に対してEV+1.75(ISO感度x2, 時間x1.5)の露出補正をしてある.
X-A1改造(露出を+1.75段補正) | X-T20ノーマル |
やはり, ひとコマの写りは改造機の方が良さそう.
まとめ
- Fujifilm X-T20(ノーマル)と比較して, 型落ち廉価版であるX-A1のIR改造機は赤い星雲が若干良く写る.
- X-A1はベイヤーセンサーなので, XTransの特徴である低ノイズの恩恵はない. ダークをXTrans機と比べて少し多めに撮る時間が必要(5枚 vs 10枚?).
- 一方, X-A1はX-T20と比べて画素が少ない(1600万 vs 2400万)ので, 後の画像処理は速い.
- X-A1改造機で見られたノイズ(現れる場所が変動する)は, ダーク補正で何とかなる.
- X-A1の不便な点はEVFが無く, LCDで見える星が少なすぎること. フレーミングした後では視野内に見える星がないことが多いので, 十分明るい星でフォーカスを決めてから視野を調整する必要がある. 視野の微調整は高感度試し撮り(FINEで〜ISO25600)と望遠鏡のファインダで.
- それに対してX-T20はEVFで見える星がたくさんあってフォーカス調整や視野の微調整はEVFで可能. 高感度の試し撮りはRAWでもISO51200まで使える.
ということで, X-A1改造機はX-T20に比べて使い勝手は悪いがHαの感度で若干のアドバンテージがありそうという結論. 赤い星雲を攻めるときには多少なりとも効果的な武器になるかもという期待感あり.