NHK朝ドラの「まんぷく」はなかなか人気のよう. 夫婦愛と飽くなき発明への挑戦者の物語としておもしろい.
そのモデルとなった即席ラーメン(チキンラーメン, 1958年)の発明者で日清食品の創始者である安藤百福氏は, 実は台湾出身者であることをWikipediaで知った.
しかし, 彼が台湾人であることは物語からは完全に省かれている. 日清食品のwebサイトにある安藤百福の伝記にも, そのことは何一つ書かれていない.
これについて, こんな記事を見つけた.
現代ビジネスの記事
野嶋剛: なぜNHK「まんぷく」は、安藤百福の“台湾ルーツ”を隠したのか
実は台湾でも結婚していて妻子があった. 何かあって台湾を離れて大阪に移り, 成功後も故郷には錦を飾らなかったという. 台湾に残していた息子は後に日本に呼び寄せているが, 妻は台湾で亡くなっている. 日本でも台湾出身華僑との関係に何かあったのではないかとか, チキンラーメンの発明の重要なブレークスルーである「瞬間油熱乾燥法」は実は台湾には既にあった方法だったとか..
物語の裏には明かしにくい諸事情もあったのかもしれない. また, 物語の中で憲兵に捕まった事件など, 実は彼の出身が影響していたエピソードも多いのかも..
まあ, ともあれ「即席ラーメン」は台湾出身者が日本で発明し, 世界に普及した偉大な技術であることに変わりはない. 世の中になかったものを創りだして普及させたのだから日本によくあるimprovementじゃなく立派なinnovation.
1958年のチキンラーメンに始まった即席ラーメンの歴史は, 欧米への普及をめざす安藤氏が1966年訪米でカップヌードルを着想し, 開発期間を経て1971年に発売されたことで袋麺からカップ麺へと新たなフェーズを迎える. その後も91才で宇宙食の開発に挑戦し, 2005年にはスペースラムとして実用化され, 国際宇宙ステーションで宇宙飛行士の野口氏が人類史上初めて宇宙でカップラーメンを食する.
日清カップヌードルについてはささやかな思い出がある. 高校時代, 学校の坂を降りた目の前に児玉商店という店があり, たびたび昼休みに(上履きスリッパのまま)降りて行って, そこで決まってチリトマトヌードルを食べた. 私の中ではこのチリトマトヌードルが, 何種類もあるカップヌードルの中で今もNo.1である.
いろいろなメーカーのものを食べてみると, 日清のカップヌードルだけの特徴がある. それはスープの量が多すぎず, 残らないということ. コンビニなどで買ってすぐに食べる時, 多くのカップラーメンたちはスープが残ってしまって店の人に「これ捨てて下さい」ということが多い. しかし日清カップヌードルはそれをやる必要がない. 真によく考えぬかれたバランスで造られているものだと感嘆する.
(本当にそこまで考えられているのかは聞いたことがないけど)
袋物の即席ラーメンとしては, 実はチキンラーメンから始まる揚げたちぢれ麺(ノンフライのもある)とは全く異なる, 棒ラーメンというカテゴリがある. 私は大学生のころに天文サークルの先輩(鹿児島の人)が持っていた「マルタイラーメン」を見たときから, 実はこちらの方を好む. 最近になって似たような九州系の棒ラーメンをスーパーなどの売り場で目にするようになった.
博多ラーメンなどの九州ラーメンは, 元来そうめんのような細い麺を使うことで茹で時間を短縮したものなので, 安藤氏がすぐにできるラーメンにするために苦労して編み出した油揚げの方法を使う必要が無かったのかもしれない.
棒ラーメンもチキンラーメンのすぐ後で, 1959年〜1960年に九州でいろいろと発売されたとのこと.
アウトドアにはこちらの方が省スペースで良い.