SirilでStacking処理をやってみた
先日は星野写真をGimpによるStackingで処理してみたが↓今朝雲の切れ目に頑張って撮った(笑)金星をもう少しちゃんと処理してみようということでUbuntuのパッケージにあるSirilというソフトを使ってみた.
IRISという天体写真用のツール(Windows版フリーソフト)があって, SirlはLinux版のIRISみたいなものという意味らしい.
Siril:Tutorial stacking - FreeAstro
かなり機能豊富らしいが, 日本語の資料はほとんどない(全く?この記事世界初?). 使い方もちょっとややこしそう. でもUbuntuにあるので上のTutorialを見てStacking処理をやってみた.
元の画像はこういうかんじ.
(8cm屈折望遠鏡, セレストロンズームアイピース8-24mmを8mmで, Canon G7xの光学ズームいっぱいでISO1600, F4, 1/500で撮影)
前の星野写真は全てJPGのLargeサイズで撮ったものだが, 天体写真のように階調に関して最大限にデータを保存したい場合はRAWじゃないとダメらしいのでRAWフォーマットで撮影.
34枚とったうちのシンチレーションのましなもの9枚を選んでSirilによってStacking処理した結果はこうなる. なかなかよいかも :-)
Sirilの使い方をまとめておく. (日本語の解説はこれが初!?)
Sirilによる天体写真のStacking処理
ここに説明(英語)がある: https://free-astro.org/index.php?title=Siril:Tutorial_import
準備として, CanonのRAWファイルを正しく変換するためにはウィンドウ上端の"File"メニューの"Settings"の"RAW files"タブで"Image Gamma correction"を"sRGB"にしておく. これをやらないと, ファイルを変換したときに色を1チャンネルだけとりだした白黒イメージになってしまう.
(追記: FujifilmのRAWファイルはSirilではサポートされていないらしい. darktable(Ubuntuにもある)などのRAWファイルを扱えるツールで予めPNG(16bit)などに変換しておくことが必要. JPGは8bitで階調が落ちる.)
使用する画像データは以下の4種類. なければ被写体の画像だけでもできなくはないかもしれないが, 補正用のデータ(dark, offset, flat)はあったほうが良いに違いない.
- 対象とする画像, 数枚から数十枚?
- "dark"画像: 対象画像と同じISO, 露光時間で真っ暗で(カメラを塞いで)撮影した画像10枚くらい. (対象撮影と同じ条件で素子のノイズ?)
- "offset"画像: 同じISO, 最短露光時間(1/4000sとか1/2000sとか)で真っ暗で撮影した画像10枚くらい. (対象撮影と同じ条件で素子の最小ノイズ?)
- "flat"画像: 同じISO, 同じレンズ(望遠鏡)を通して一様な拡散光(飽和しないこと)を撮影した画像10枚くらい. (光学系のムラ) =>フラット撮影の方法: こんな記事が.. [フラットフレームの撮影とフラット補正 | 天体写真の世界] [フラットフレームの撮影と処理 - Starry Urban Sky]
Stackingの手順は以下の通り.
補正用データ(dark, offsetなど)がある場合は, それらについてまず以下の手順にしたがってStackingをやりmaster画像(master-dark, master-offset, master-flat)を作る. その際は3, 4を飛ばして変換された画像からすぐにStackingをやる. 補正データのmaster-*ができたら, それらを使って対象画像の処理をやる(master-*を"pre-processing"で使う).
- "Working directory"を設定.
- Sirilのメインウィンドウの右下にある"Change directory"で作業ディレクトリを指定. 予めディレクトリを作ってそこに元の画像, dark, offsetなどの画像を入れておくと良い.
- "File conversion"(元のファイルを"FITS"形式に変換)
- "File conversion" タブ.
- "+"ボタン=>元の画像ファイルを複数指定.
- "Generic name:" <= 変換後のファイル名の冒頭部分を指定.
- "Convert"
- 変換済みファイルは指定したWorking directoryに生成され, 連番と拡張子*.fitがつく.
- 画像ウィンドウに変換後の画像が表示される. (白黒とカラー) 白黒のウィンドウの右の方にある三本線ボタンを押すとファイルリストが表示され, リストのファイル名でダブルクリックすればその画像が表示され, 各々の状態を確認できる.
- "Pre-processing" (dark, offset, flatの補正)
- "Pre-processing" タブ.
- "User offset:" "Use flat:" : "master offset"と"master flat"ファイルを選ぶ.
- "Start pre-processing".
- Pre-prcessingが完了すると, できた画像が画像ウィンドウに表示される. 画像ファイル名はpp_...となる. 各画像を確認して, いいのを見つけて"reference image"にする.
- "Image sequence"でその画像に対して"reference image"のチェックをつける. 画像シーケンス名が"pp_..."となっているのも確認.
- "Registration" (位置合わせ)
- "Registration"タブ.
- "Choose registration method:" : 惑星などには"Image pattern ...", 星野は"Global star..", かな? "One star.."は彗星とか?
- 画像ウィンドウで画像の適当なエリア(位置合わせに関係するものが写ってる範囲)を選択. (選択しないとGo registrationが押せない)
- "Go registration".
- *もし範囲内に"pre-processing"の後で有害なノイズなどが残っていれば, 位置合わせがうまくいかない. その場合Stackingの結果に位置のあわない像が入る. "pre-processing"をやり直すか(画像ウィンドウのcutなどの調整で背景を黒くするとか)Retistrationで選択範囲を狭めて背景のムラなどを除外してみる.
- "Stacking"
- "Stacking"タブ.
- "Stacking method"と"Normalization"を選ぶ.
- "offset", "dark"画像の場合, "Median"と"No Normalization".
=> Stackしたものを"master offset", "master dark"という. "Store result in:"に適当なファイル名を指定して保存する. - "flat"画像の場合, "Median" と "Multiplicative with scaling"を選ぶ.
=> Stackしたものを"master flat"という. - 対象画像をPre-processed及びRegistered処理したものに対しては, "Average stacking with rejection"と"Additive", またはその他何でも適当と思われるものを選択.
- "Start stacking"を押す.
以上でStackingができる. 完了したら画像ウィンドウに処理後の画像が表示される. ウィンドウ上端の"File"メニューの"Save as"で各種形式に保存できる. (例えばJPG)
欠点というかひとつだけ困る所は..., Sirilで扱うFITS形式の画像ファイル(*.fit)はサイズがでかい. Canon G7xのRAWイメージ(*.CR2)が1枚18MBくらいあるのだが, これをFITSに変換したら120MBくらいになり, 10枚位のStackingをやるのに5GBくらいのデータができる. まあ処理をやったあとで消せばいいのだが...