Fujifilm X-E2の改造を企図するも...
Fujifilmのミラーレスは他社と比べてHα線の赤い輝線星雲がよく写るというウワサからFujifilmユーザーとなったのだが, いろいろ撮ってみると, これはIRカットフィルタを除去した改造カメラでないとだめか?というモノに出くわす. おうし座にあるSh2-240 (スパゲティ星雲, 手強いゲテモノと言われる)はX-E2とASI385MCでQBPフィルタを使って試したが未だ撮影に成功していない.
CanonやNikonは改造を引き受ける業者があるが, Fujifilmは改造したときにノイズが増えるなどのトラブルが起こることがあるらしく, 業者も改造を引き受けなかったりする. それで巷に溢れる天体写真の撮影例の中にもFujifilmの改造機はほとんど見られない.
ほぼあきらめていたときに, ○○オクに出品されている改造サービスを通じてFujifilm機の改造も引き受ける方が見つかり, ダメもとで依頼してみた. その方のブログではノイズの理由の考察や対策なども書かれていて, リスクを承知で実験のつもりでやってみる気にもなる. 結果は... 改造のためにこちらから送ったX-E2は, 作業の過程でショートで破損しTT(中古だったのだが, 初期状態で配線の配置などに問題があったらしい), 代わりにX-A1を改造したものが納入された. X-A1はFujifilm Xシリーズのエントリー機で, X-E2などと同時期に発売されているがセンサはXTransではなくベイヤー, EVFなしで若干機能が限定的なモデル.
Fujifilm改造カメラはHαがよく移るか?
その効果を確認するために, Hα線の星雲を撮ってみた. このところしばらく月もあったし雨が降ったりしてやっと撮れた. Hα線の星雲たち(天の川沿いに多い)は, この季節は宵の口の西の空か, 明け方の東の空にしか見られない. それで久しぶりに晴れた夕方, 西の空に沈みそうな大いぬ座の「かもめ星雲(IC2177)」を撮ってみた.
改造済みのX-A1とノーマルのX-T20, ちなみに前者はX-E2などと同じ世代のベイヤーセンサのモデル, 後者はX-E2の次のX-E3と同世代でXTrans CMOS IIIセンサのモデル. これをほぼ同じ設定で使用した.
撮影データ: Nikkor Ai-S ED 180mm F2.8, SVBony CLSフィルタ使用, ISO3200, RAW, 露出2min, 6コマスタック. ダーク, フラット補正あり.
画像処理: APP (Astro Pixel Processor)でスタック, 背景のWB調整, ストレッチ, さらにRawTherapeeでコントラスト, WB再調整.
X-A1改造 | X-T20ノーマル |
左のX-A1のケースはフォーカスが甘くなった. EVFの無いX-A1ではLCDで星像が見えづらく, フォーカス調整がなかなか大変. 右のX-T20はフォーカス調整は格段にし易い(明るい星のないこの視野内でもEVFで星が見える!)が, この度は若干ずれて星に赤いフリンジが出るところになってしまった(このレンズは焦点近傍の微妙なずれでそうなることがある). 赤い星雲の出方は...あまり変わらない気がする. 右の方が下のカブり領域が大きくなっているのは, 後で撮影したのでもっと西の空低くに下がってしまったからと思われる.
処理前の画像の比較のため, 各々のカメラで写りの良い1コマだけをRawTherapeeで現像だけして縮小したもの比べてみると...
X-A1改造 | X-T20ノーマル |
X-A1改造機では全体に赤カブりが多くなる(IRフィルタ除去の影響と思われる). 背景に対する赤い星雲のコントラストは, やはりあまり変わらないか, むしろX-T20の方が良い気もする. また, X-A1改造機のダーク画像をコントラスト強調してみると, 改造による副作用と見られるカブりがみられた. その辺がFujifilm機を改造する場合のリスクらしいのだが, リスクをおかして改造してある割には, それほど顕著なご利益があるわけでもないかもしれない.... というのが今回のテストの印象だった.
このテストでは比較相手がより新しい型のXTransセンサなので, 元々の性能差があるわけで, X-A1のベイヤーセンサの元々の写りと比較すれば, フィルタを抜いているわけだから当然Hαの受光量は増えているだろう. ただ, そもそも上位スペックのXTransセンサで性能がさらに向上した一世代後のを凌ぐほどの写りではないということ.
今回は撮影条件が良くなく(すぐ沈んじゃう!)急いで撮ったので, 次回は夏の天の川の賑やかなところが高く昇ってくるころにもう少しちゃんと比較してみることにする. もしかしたらSVBony CLSフィルタ(いわゆる激安品)がちゃんとHαを通す仕事をしていないのかもしれないし...ということで, ノーフィルターで北アメリカ星雲などを...
X-A1の無改造機も実はまだ天体写真ビギナーに需要があるらしい
無改造のX-A1ではどのくらい写るのかは分からないが, 探してみると...
2019年の記事. 25mmで「F8で攻める」?なかなかのツワモノ(広角でそこまで絞ると口径が小さくなって回折の悪影響が出そうな気もするが..). 無改造でカモメ星雲や, もっと淡いものも写っている. 25mmレンズでF8まで絞り, ISOと露出は今回のテストとおなじ3200, 2分, スタックが20コマとのこと.
つい最近の記事. 今でも最高のコスパで天体写真を始めるための1台めとして需要があるらしい. 私が3年前に同じ考えでX-E2に手を出したのを思い出す. この記事でもフォーカス調整はLCDでは難しく明るい星で合わせておく必要ありと...