13:30〜 松江駅よこの松江テルサにて, 原子力発電の高レベル廃棄物(使用済み燃料)の地層処分に関係する"「科学的特性マップ」に関する対話型全国説明会"が催された.
せっかく地元にNUMO(原子力発電環境整備機構, 何法人?と思ったら, 2000年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法)によって設立された法人とのこと.)の人が来るというので参加してみた.
全体の説明と質疑応答の1部(13:30-15:00), テーブルでの討論の2部からなり, その全体に参加した. 2部まで参加したのは13名. 後ろの席(1部だけの人)は20人くらいいたように思う. 始まる10分位前に会場に入ると, 2部まで参加する人たちのテーブル席のうち一つは6名で埋まっていて, その隣の詳しいことを聞きたい人用のテーブル席に加わった.
1部は初めに地層処分の概要説明の映像を視聴して, 次にNUMOの人が説明して, 質疑応答. 2部は2つのテーブルにNUMOや研究所の人が加わって討論. 時間が終わっても話は続くなかなかホットな雰囲気.
私のQAはこんな感じ.
- Q: 最終的に地下の岩盤に埋めた後は塞いでしまうということだが, 人の手が離れた後に何かトラブルがあった場合に備えてモニタリングを続けるのか? モニタリングで異常が検出された場合に再びアクセスすることができないと思うが, それでいいのか?
- A: モニタリングについては方法の研究は行われている. 具体的には地域住民と相談して方法や期間などを決める.
- Q: "1万年後までの安全"(容器に異常が生じない)が担保できるという説明はあまり確度があるとは思えない(自然の変化を予測するのは不確かさがあまりに大きいのでは?). 歴史記録がある1000年くらいなら遺跡も保存されているし現実的に考えられそう. 一方, 放射能の量と時間的な減衰は厳密に予測ができるから, 放射能が天然ウラン並になる万年オーダーの話よりも短いX年(1000年とか)でどこまで減衰するのか, その時に容器破損を仮定したらどのくらい地上に出てきてその影響はどのくらいか, というのを見せてもらった方が判断の助けになりそう.
- A: 火山活動や断層などを仮定して, どんな場合はどのくらいの影響がでるかのリスク評価もしている.
興味深かったのは, 火山活動は200万年くらいにわたって一定の地域(プレートの潜り込みが100kmくらいになるあたり, 日本列島の背骨部分)で続いていて, その南東側ではこの先数十万年にわたって火山噴火は無いと, かなりの確度でいえるそうだ. 90年代から発達した地震トモグラフィや電磁波(?)で地下の構造はかなり分かってきて, 断層や火山噴火がなさそうな範囲というのはそれなりの根拠で言えるとのこと.
地震を心配する声が多かったが, 地層処分された廃棄物は周りの岩盤といっしょに揺れるだけだから地震はあまり問題ではないという. それは分かる. そして断層や火山は場所を選べば避けられるということらしい.
私の隣にいた方は, かなりいろいろな情報を集めて勉強されているようで, 名大の福和教授や元原子力規制委員会の島崎氏の話の引用して, 地震の予想は不可能だと専門家が言っているが今日の話はそれと矛盾している, 地震国で地層処分はダメと主張されていた. またプルトニウムはとても危険とか, 福島で東電はちゃんと補償していない云々, トピックのずれたお話もあったりした.
福和氏の話というのは後で調べてみると, 地震がいつどこで起こるかの予知はできないが, 限られた情報からでも個人や家庭の自助, 地域の共助, 政策の公助によって被害を減らす努力が重要という話のようだ.
- 南海トラフ地震対策、大震法を見直し、予知から防災・減災へ(福和伸夫)
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuwanobuo/20170827-00074993/
- 過去の震災に学び南海トラフ巨大地震に備えるhttp://www.sharaku.nuac.nagoya-u.ac.jp/data/fukuwa/paper-pdf/1309kyousaitohoken.pdf
今日の説明会で地震専門家として説明された宇都氏によると, 要するに地震や噴火の"予知"(いつどこで)はできないが, 噴火と断層の生じる"地域の予測"は(上のトモグラフィのことなどにより)できるとのこと.
終了後に会場の外でインタビューを受けていた方は地震国に地層処分は合わないという論を語っていた.
この先原子力をどのくらい使うのか, 使わないのかに関わらず, 少なくとも今ある廃棄物の行方は決めなければならない. 地震や火山が危ないから埋めないという考えは, 実は地上の方が危ないかもしれないということを忘れているんじゃないかと思う. 埋めない理由があるとすれば, それは人間の手で管理できる所に置きたいことの他になさそう. 人の手を離れた大深度に埋めることの妥当性を示すには, たとえそこで漏れても実質的な害にならないと言える必要がある. その状況は数万年待たなくてもありそうな気がするが, やってるという「リスク評価」でどこまでやってるのかを見てみないと...
専門家という人々の間でも意見の違いはある. 一方の主張や誰かの言葉尻をとらえて「◯◯は危険だ/大丈夫だと科学者が言っている/政府の文書に載っている. だからダメだ!/良いんだ!」 という論法は理屈になっていない. 主張の根拠を多少なりともあたって個々人が自分の頭で考えることをやっていかないと互いに受け容れられる妥協点は見つからず, 議論は収束しない.
2部では言いたいことを書いて出す紙があって, 上のQAに加えてこんなことを書いて出した.
- 再処理後の廃棄物であればプルトニウムは除かれているので核拡散の心配はないはず(dirty bombは心配だが). 外国にもっと安定で広い土地があれば国際協力の処分場というのも考えられるのではないか?
- 埋める前に熱源と放射線源として使えるだけ使った後, 利用の利益が無くなる頃に埋める, 資源としての利用とセットでの運営を考えれば, 受け容れる側のメリットがあるのでは?
残念ながら時間切れで話題に登らず.
フィンランドは最終処分場を決めた. http://www.afpbb.com/articles/-/3090649
原発に核廃棄物, それから防衛(憲法)はゴネて現状に留まっていても解決は遠くなり状況は悪くなるばかり. 自分の問題として本気で考えないと...