風来坊@真幸福知

風来坊@真幸福知

始まりは坐禅会のご案内, 思いつくことを何でも書いていたら星空系に... Started with Zazen session info. now almost astrophotos. 시작이 참선회 안내, 이제 별하늘 사진들.

韓国語と日本語のはざまで

韓国の高校を卒業した娘がその友達たちと使うらしい韓日ミックス言語のバラエティを収録してみることにした. ふと調べてみると,文法的に一貫性があることにあらためて感心したりする. 彼女らは無意識に正しく(?)文法的な処理をやっていたのだ...

  • マンへる =망하다(マンハダ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: 滅びる,大失敗する,ダメになる
  • モショる =모시다(モシダ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: 目上の人に仕える,お伴する,案内する
  • シキョる =시키다(シキダ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: 人を使う,命令する,(特に出前などを)注文する
  • ミチョる =미치다(ミチダ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: 気が狂う,熱中する
  • コドる =거두다(コドゥダ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: 集める,取り入れる,収穫する
  • ポバる =뽑다(ポプタ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: (くじなどを)引く,選抜する
  • タチョる =다치다(タチダ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: 怪我する
  • チゴる =찍다(チクタ)連用形+日本語動詞ら行五段活用語尾: (写真を)撮る,指し示す,(試験などの選択肢を)適当に選ぶ
  • 試験みる =시험을 보다(シホムル ボダ=試験を見る(受けること))という韓国語の言い回しの直訳

用例集

  • マンへる: も〜, 今回の試験マンへったよ〜
  • モショる: へぇー, お父さんもモショられてんだぁ〜, 一応先生だもんね〜
  • シキョる: あの人やたら後輩にシキョるのよね〜. ピザでもシキョる?
  • ミチョる: 辞書作る映画あったでしょ? ああいうのミチョってるっていうのよ.
  • コドる: 学生会費コドった?
  • ポバる: 次の学生会長ポバんなきゃだけど..
  • チゴる: 試験どうだった? あ〜, 全部チゴった.
  • タチョる: 大丈夫? タチョった?

少し話が変わるが, 今はすでにご高齢のイ・ヨンヒ(李寧熙)という韓国の作家がいる. 万葉集(漢字に日本語の音をあてた万葉仮名で書かれている)を韓国の吏読(イドゥ,新羅時代に漢字に韓国語の音を当てた記法)を取り入れて解釈すると,従来とは違う意味に解釈できるという説を展開した「もうひとつの万葉集」(文藝春秋,1989), 「枕詞の秘密」(文藝春秋,1990)を書いて有名になった方である.
日本の高校で教わる古文など, 要するに日本で一般的に受け入れられた説とは全然違う意味になるが, とても当時の状況に合うように見え率直かつ大胆な表現に共感できる. 万葉集という謎の詩集に対する新たな目を開かせるブレークスルーだと思う.
何でもかんでも韓国中心主義で解釈するトンデモ本という批判もあるようだが, 私はこういう, ある確立された学問分野の関係者外からの新たな視点を, 偏見なく批判し価値を認めて受け入れることは重要だと思う.
さて,これらの本のひとつのポイントは「枕詞」,それ自体の意味は不明だがある言葉の前にくるものと思われていた枕詞は, 実は韓国語として意味をもっていて詩の一部であるという解釈だ.
まだ日本も韓国も各々が複数の国(あるいは地域勢力)から成り,盛んに人的交流があった古代,双方を行き来しながら文化を醸成した人々は混ぜこぜ言葉を面白い, カッコイイと思って使っていた. そしてその文化が詩に記録されていた.

これは実はとても自然なことに対する気付きではないかと思う.現代もそうだからだ.

Wake up! Wake up! ....いま〜 愛がつきぬ〜ける〜 (財津和夫,Wake up)
.. Someday.. このむねに Someday... 誓うよ Someday .. (佐野元春,Someday)
(ちょっと古い?すごく?)

何故だか分からないが, こういう現象を見ると, いつの時代にも国と文化の境界線上で異なる言語の融合を面白い, あるいはカッコイイと思って口ずさむのは人間元来の性質の一部なのかも知れない. 異質なものへの興味, 交流によって生まれる変化と創造, そして心が通じる喜び. これは国境や民族間での無知と葛藤を乗り越える力になる, 人間が深い所で共通の価値感を共有していると信じるならば.